東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出で漁業を営む権利などが侵害されたとして、漁業関係者や市民ら363人が国と東電に放出の差し止めなどを求めた訴訟の第1回口頭弁論が4日、福島地裁(小川理佳裁判長)であった。法廷で原告4人が意見を述べ、福島県新地町の漁師、小野春雄さん(72)は「処理水の放出で先の見えない不安を抱えている。求めることは、子々孫々まで漁業を続けていくことだ」と訴えた。
国側の弁護士は「海洋放出は特定の個々人の権利を侵害するものではなく、一般的公益に資するものだ」などと反論した。原告には裁判を起こす資格がないとして、訴えの却下を求めた。東電側は答弁書で請求の棄却を求めた。
訴状によると、原告側は、処理水の海洋放出は漁業関係者らのなりわい回復を困難とし、市民が平穏に生活する権利を侵害すると主張。関連設備の検査を合格とした原子力規制委員会の処分の取り消しや、東電に放出停止などを求めている。【毎日新聞】