能登半島地震で震度7を観測し、大きな被害が出た石川県志賀町の稲岡健太郎町長(46)が、本紙の取材に応じ、北陸電力志賀原発について2007年と23年に能登地方で地震が頻発した状況を引き合いに「北電は再稼働を目指すとのことだが、首長として以前のように安全性をアピールすることは難しい」と語った。合わせて、重大事故を想定し避難経路を抜本的に見直す必要性を強調した。
昨年末、元町長が絡んだ贈収賄事件に伴う町長選で初当選。約1週間後、未曽有の震災が起きた。町長選では「化石燃料に頼り、電気代も高騰している現状では、すぐにでも原発を再稼働すべきだ」と主張したが、一転、半島地震を受けて慎重な姿勢に態度を変えた。
原発の耐震については「敷地外の活断層を巡る専門家の意見や原子力規制委の判断を待つ」としたが、「安全対策の強化や審査の長期化などを考えると再稼働の道筋が見えてこない」と指摘した。
年に1度実施の県と北電による避難訓練にも言及。想定されている避難経路が今回の地震で壊れ、寸断したことを受け「海にも空にも逃げられない。現実的でなく、訓練のための訓練だった。抜本的に見直す必要がある」と語った。
町内に16カ所ある放射線防護施設については「1カ所に40~50人を収容し、1週間以内に救助隊が来る想定で、備蓄があると認識している」と説明。だが「万が一の場合、全町民を受け入れる容量はない。施設を何倍も増設する必要がある」と、町防災計画の見直しを検討する考えを示した。
防災服で取材に応じ「地震直後、原発事故が頭をよぎった。北電の説明を聞き、稼働停止の現状を踏まえ、事故はないと分かった」と振り返った。その上で「むしろあの揺れをよく耐えたな、というのが率直な思い」と続けた。【中日新聞】