テロ対策の不備が相次いだ東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に対する事実上の運転禁止命令を原子力規制委員会が解除したことを受け、県の有識者会議「技術委員会」は29日に会合を開いた。事務局の原子力規制庁から解除の判断について説明を受け、東電に原発を運転する「適格性」を認めた経緯をただした。終了後、小原徹座長(東京工業大教授)は「説明は理解できた」と話した。
命令解除により再稼働の焦点は「地元同意」に移っている。花角英世知事は規制委の判断を議論の材料にするとしており、この日の会合の内容も検討される見込みだ。
規制委は昨年末の命令解除にあたり、「セキュリティー(核物質防護)」と「セーフティー(安全性)」に分け、テロ対策の不備に対する追加検査と、保安規定の「七つの約束」が守られているかの確認をそれぞれ進めた。会合ではこの点が論点になった。
中島健委員(京都大名誉教授)は、侵入検知設備が機能していなかった問題で規制委が、東電が福島第一原発事故後に取り組んだコストカットの影響があるとした点について、安全最優先の事業運営などの七つの約束が「順守されていないことになるのではないか」と述べ、適格性を認めた規制委の判断を疑問視。「これで良しとした理由を説明してほしい」と求めた。規制庁は「さまざまな観点から確認し、守られていると判断している」と答えた。
岩井孝委員(元日本原子力研究開発機構研究員)は「発電所の安全が守られるには、セーフティーとセキュリティーを合わせて『適格』でなければいけない」と規制委の判断を批判した。
奥村晃史委員(広島大名誉教授)は、侵入検知設備の中には11カ月間にわたり機能が失われていたものもあったとの説明に、「なぜ規制庁の(通常実施する)基本検査の中でわからなかったのか」とただした。
これに対し規制庁は、セキュリティーの検査は、日常的に現地事務所の担当者が原発に入るセーフティーと異なり、年に数回東京から担当者が訪れて実施する態勢になっていたと説明。「この設備は対象にあたらなかった」と釈明した。
そのうえで改善策として、今年4月から「現場の検査官による日常検査を導入する」と明らかにした。すでに全国の現地事務所に核物質防護担当の職員を配置しており、これを活用する考えを示した。
小原座長は終了後、各社の取材に「丁寧に答えていただいた」と述べた。
【朝日新聞】