原発の使用済み核燃料を一時貯蔵する中間貯蔵施設を中国電力と関西電力が計画する山口県上関町の住民100人を対象に共同通信が実施した対面調査で、施設誘致について「反対」「どちらかといえば反対」と回答した人が計59%に上ったことが24日分かった。理由は、そのまま永続的な処分場となることへの懸念が最多だった。
国の核燃料サイクル政策は原発で使った核燃料を再処理工場(青森県六ケ所村)に搬出してプルトニウムなどを取り出し、核燃料にして再び原発で燃やすことを目指す。中間貯蔵施設は、20年以上完成延期を繰り返している再処理工場へ搬出するまでの「仮置き場」と位置付けられているが、反対多数となった背景には実現が見通せない政策への不信があるとみられる。
調査は10月末から12月初旬にかけて実施。年齢や地区ごとの人口分布が町の実態に近くなるよう取材した。100人は直近の人口2277人の4%余り。
「反対」が29%、「どちらかといえば反対」が30%で計59%。理由は「永続的な処分場になる懸念がある」が11人で最多。「賛否を巡って町が分断」が10人で、「その他」として施設の安全性への懸念を挙げる住民も多かった。「賛成」は14%、「どちらかといえば賛成」が27%で計41%。理由は「国の交付金で住民サービスが向上」が18人で最も多く「新たな雇用が生まれる」が6人で続いた。
8月の計画表面化から半月後、説明会を開くこともなく西哲夫町長が建設に向けた調査の実施を容認したことを巡り、事前の住民説明について49%が「不十分」と回答。「どちらかといえば不十分」の14%と合わせると63%に上った。町への要望は「住民説明会の早期開催」が最多だった。
停滞する中国電上関原発計画に代わる地域振興策を町側が要望し、中国電が8月、中間貯蔵施設を提案した。
「一切説明なし」「突然」 住民不在の計画に憤り
「一切の説明がなかった」「あまりにも突然だ」-。原発の使用済み核燃料の中間貯蔵施設について共同通信が実施した山口県上関町の住民調査で浮き彫りになったのは、町が説明会も開かず、住民不在のまま計画が進められかねない現状に対する憤りだ。
計画が表面化したのは8月初旬。停滞する中国電力上関原発計画に代わる地域振興策を町側が水面下で要望しており、中国電幹部が町役場を訪れて中間貯蔵施設を提案した時だ。多くの住民にとって寝耳に水だったが、西哲夫町長は約半月後、中国電の建設調査を容認する考えを表明した。
保育士の30代女性は「町民の意見を聞く姿勢が全く感じられなかった」と振り返り「今は判断しようにも分からないことが多すぎる」(30代自営業男性)と困惑の声も上がった。
町づくりに対する姿勢にも厳しい視線が注がれた。20代主婦は施設建設により「町が目指す移住者や若者の増加は実現しなくなる」。60代男性は東京電力福島第1原発事故に触れ「安全だと言われても福島のように事故が起きるので懸念が残る」と口にした。
「町の過疎化に歯止めがかかる」(80代無職女性)と肯定的な意見もあった。原発計画への賛否を巡って「親兄弟や親戚で絶縁になった人もいる」(70代無職男性)地域で、再び町が二分することを懸念する住民は多く疲弊感も漂う。中学2年の女子生徒は「先生や家族は中間貯蔵施設が来るかもしれないとうわさレベルで話す程度」「将来は町を出るかもしれない」と話した。
中間貯蔵施設 原発の使用済み核燃料を日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)へ搬出するまでの間、一時貯蔵する施設。中国電力と関西電力が山口県上関町で計画するほか、東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市で建設中。再処理工場の稼働が見通せない中、電力各社は使用済み核燃料の一時貯蔵先の確保を迫られており、四国電力や九州電力は既存の原発敷地内に貯蔵施設を建設する方針。
【静岡新聞】