福島第一原発の処理水をはじめて海に放出した8月。
■東京電力ホールディングス 小早川智明社長
「正しい行動と実績を積み重ねていくことこそが、地元の皆様へのご信頼に繋がり、信頼がベースとなって初めて復興と廃炉が両立していくという風に考えておりますので。」
あの日から2か月あまり。10月30日の夜、東京電力は…。
■東京電力の会見
「飛散した洗浄廃液が当初100ccだとお伝えしましたが、実際のところ数リットル程度でした。」
先週、作業員が放射性物質を含む液体を浴びた事故で情報を訂正しました。
漁業者や福島県民に誓った約束はどこへ…
今回の事故に端を発して、改めて東京電力の情報発信のあり方が問われています。
福島第一原発で処理水の3回目の放出開始を、11月2日に控える中、漁業関係者からは信用がなくなってしまうと厳しい声があがっています。
10月25日、福島第一原発の汚染水から放射性物質を除去する施設アルプスで、配管の洗浄中にホースが外れ放射性物質を含む液体が5人の作業員に飛散しました。
このうち2人が福島県立医大に入院し28日に退院しました。
この時の飛散量を東京電力は当初、100ミリリットルほどと発表していましたが、数リットルに訂正しました。さらに…
■午後の東京電力会見
「従事してた作業員、1次受け企業で5名とお知らせしてございましたが、こちらは3次受けの企業の計3社、3社で5名であったことが確認されております。」
と、作業員の情報にも誤りが…。
いずれも、改めて作業員への聞き取りや現場の状況を確認したためとしています。
なぜ、はじめから正しく情報が発信できないのでしょうか?
10月31日、3回目の処理水放出へ準備を始めた東京電力、今回の事故を巡る情報発信のあり方については…
Q.県民や漁業関係者が不安に思った場合は?
■31日の東京電力会見
「情報の正確な発信につきましては、貴重なご意見として承り、更なる正確な情報の発信に努めてまいりたいと考えております。」
安全な廃炉作業と処理水の放出を求めてきた漁師は?
■漁師 志賀金三郎さん
「しっかりした開示をしてもらわないと不安になっちゃうんだよね。信用問題だよね。この(処理水放出の)矢先でこんなトラブルだの、いろいろなやつになったら漁業者ばっかりじゃなく他の消費者の人も信用がなくなるんじゃないかなと。」
10月31日の午後、東京電力は福島県との会議にオンラインで出席し、改めて謝罪しました。
■東京電力の担当者
「今回の作業員の身体汚染について県民の皆様、広く社会の皆様に大変なご心配をかけてることに改めてお詫び申し上げます。」
今回の事故では、作業員が汚染を防ぐカッパを着ていなかったことから、福島県の専門員が装備を統一すべきなどの意見をしました。
さらに、福島県も…
■福島県危機管理部 鈴木晶政策監
「今回の情報公開においては内容の正確性や信頼性を欠く部分がみられたことから、その原因について調査するとともに、正確な情報発信に責任を持って取り組むこと。」
東京電力の情報発信の在り方もそうでですが、気になるのが省庁間の連携不足です。
10月30日に国会ではこんな一幕がありました。
土屋復興大臣が衆議院の予算委員会で、今回の事故の情報をいつ知ったか問われると…
■土屋品子復興大臣
「その件につきましては、報道で知った次第でございます。」
東京電力や経済産業省などから報告がありませんでした。
復興庁は東京電力を管轄する省庁ではありませんが、廃炉と復興は切っても切り離せませんし、これだけのトラブルなのに共有がなかったのは省庁間の連携がどうなっているのかと疑問を持ってしまいます。
岸田総理も「秘書官から報告を受けた」としたうえで、「関係省庁の意思疎通は重要なので、今一度点検する」と説明しています。
省庁の縦割りによって廃炉と復興、さらには情報発信に弊害が生まれないようにしてほしいと思います。【福島中央テレビ】