テロ対策の不備で事実上の運転禁止命令が継続となった東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)について、原子力規制委員会は12日、原発事業者としての「適格性」を再確認するため、今後の確認手順などを定例会合で議論した。東電の適格性を巡っては、規制委が再稼働審査の過程で一度は「適格性がある」と認めたが、その後発覚した一連の問題で再び判断が迫られる異例の事態となっている。
一方、規制委は適格性の確認とは別に、運転禁止命令を解除するかどうか追加検査を継続している。東電が月内にまとめる改善報告書の提出を待ってから判断する見通しで、東電が目指す今年10月の再稼働時期はずれ込む可能性が高い。
規制委は平成29年に同原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査の合格を出した際、東電に対し福島第1原発事故を起こした当事者として「安全性より経済性を優先することはない」などの7項目を約束させ、法的拘束力のある保安規定に明記するよう求めた。東電は令和2年にこれを明記し、規制委も東電が再び原発を動かす適格性があると認めた。
ところが、同原発では令和3年に侵入検知器の故障やIDカードの不正使用などの問題が相次いで発覚。規制委は同年4月に運転禁止の行政処分を下し、再稼働の動きが止まった。
今年5月には、東電社員が同原発の安全対策工事に関する書類を紛失する事案も起き、立地自治体である新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は先月、「本当に再稼働を担えるのか。他の会社の方がいいのではないか」と不信感をあらわにした。【産経新聞】