福島第一原子力発電所の事故で関西に避難した人たちなどが国と東京電力に賠償を求めている裁判で、24日から原告に対する尋問が始まり、原告らは家族が離ればなれになっているなどと避難生活による被害の実態について証言しました。
この裁判は、福島第一原発の事故のあと、関西に避難した人たちなど、あわせて85世帯234人が、平穏な生活を奪われたとして、国と東京電力に対して、賠償を求めているものです。
24日、大阪地方裁判所では、提訴(2013年)から10年となり、初めてとなる原告への尋問が始まり、3人が避難生活の現状などについて証言しました。
このうち、原告団の代表で、原発事故の発生から2か月後、福島県郡山市から大阪に避難した森松明希子さん(49)は、「福島で働く夫を残して、当時3歳と生後5か月の2人の子どもを連れて、避難を決めたのは、被ばくからどう身を守るのか危機感を感じるなかでの苦渋の決断でした」と時折、涙をこらえながら訴えました。
そのうえで、「今も家族離ればなれで避難生活を続けていますが、のぞまない被ばくを避けて健康を守る権利はすべての人にあると思います。被害の実態に見あった損害を認めてもらいたい」と訴えました。
一方、国と東京電力は、「避難指示が出ていない地域から避難する必要はない」などとして、訴えを退けるよう求めています。
原発事故で避難した人などが、各地で国や東京電力に賠償を求めた集団訴訟では、このうち4件について最高裁判所が、去年(2022年)6月に、国の責任はなかったとする判決を言い渡したほか、東京電力については賠償責任を認める判決が確定しています。
【森松さん“被害の実態理解を”】
尋問を終えたあと、森松さんは、NHKの取材に対して、「原発事故から12年たった今も、母子避難を継続していることで経済的な負担も重なり、原発事故による被害はさまざまなかたちで今も続いています。原発事故で避難した人も不安を抱えながら福島に残っている人もどちらも被ばくしないという権利があります。裁判所には国策として進められる原発によって引き起こされた被害の実態をわい小化せず、正しい判決をしてもらいたいです」と話しました。【NHK】