関西電力が競合する新電力の顧客情報を不正に閲覧した問題で、子会社の関西電力送配電が管理するシステムから令和元年11月以降、3年間で社員ら1606人が計15万件の顧客情報を閲覧していたことが17日、明らかになった。今回の経済産業省への報告書では、コンプライアンス(法令順守)意識の希薄さに加え、両社の「なれ合い」ともいえる関係性がうかがえた。
「円滑な対応を優先し、問題があるかもしれないと思いつつも、やり方を見直すに至らなかった」
関電の報告書は、そう実態を吐露した。昨年4~12月に不正閲覧した社員・委託先社員計951人から回答を得た追加調査では、法令順守をないがしろにする社内風土が鮮明になった。
閲覧の目的として社員の76・2%が「顧客からの申し出への対応など」と答え、「顧客への提案(営業)活動など」は23・8%に及んだ。電気事業法上問題になり得ると認識していた社員は40・8%に上った。
関西送配電の従業員への今回の調査でも、15人が「関電が新電力の顧客情報を閲覧できると知っていた」と回答。6人は違法性を認識していたにもかかわらず、関西送配電に報告していなかった。「(関電からの)新電力顧客の設備情報の問い合わせに答えたことがある」との証言があり、人事異動で両社に在籍している〝元同僚〟同士のなれ合いもうかがわせた。
一連の問題のハード面での原因は、平成28年4月の電力小売り全面自由化のときから、両社のシステム間の情報遮断(しゃだん)が不十分だったこと。関西送配電は「システムの完全分離を着実に推進する」としているが、あるエネルギー業界関係者は「大手電力が子会社として送配電会社を抱える現状を見直すべきだとの議論が加速する可能性もある」と指摘する。【産経新聞】