大手電力会社が競合関係にある新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題で、経済産業省は27日、大手電力10社側に求めていた緊急点検の報告を締め切った。既に不正閲覧が判明している4社に加え、新たに中部、中国の2電力でも同様のケースがあったことが明らかになった。
不正6社「公正競争揺るがしかねない」
経産省の電力・ガス取引監視等委員会(電取委)が大手10社と送配電子会社に対し、実態把握に向けた緊急点検を実施するように指示していた。電取委は報告内容を踏まえて処分を検討する。
既に不正が判明していたのは、東北▽関西▽四国▽九州――の4電力。営業担当の社員が送配電子会社のシステムにアクセスし、新電力と契約している一般家庭の住所や連絡先などを不正に見ていたケースが多かった。関西電力では不正閲覧で知った情報を営業活動に流用していた。
西村康稔経産相は27日の閣議後記者会見で「公正な競争を揺るがしかねず、極めて遺憾だ」と述べた。北海道▽東京▽北陸――の3電力は不正はなかったと報告したとしている。沖縄電力は報告の詳細を明らかにしていない。
電力小売り部門は2016年に全面自由化されたが、企業や家庭に電気を届ける送配電部門は電力大手子会社の地域独占が続いている。新電力も大手電力子会社の送配電網を使っており、送配電会社は新電力の顧客情報を管理する立場にあった。
電気事業法は、大手電力と、事業基盤が弱い新電力の公正な競争環境を確保するため、送配電子会社が管理する顧客情報について、親会社を含め小売り部門などと共有することを禁じている。しかし、十分な情報遮断措置がとられておらず、情報が親会社に漏えいしていた。一部の大手電力では不正閲覧が常態化していた可能性もある。
一連の問題は22年末に関電で発覚。関電が同年9~12月の3カ月間で調査したところ、関電社員ら計730人が計1万4657件分の顧客情報を不正に閲覧していたことが判明し、事態を重く見た電取委が立ち入り検査に踏み切った。【毎日新聞】