東京電力福島第一原発事故で被害を受けた住民らが国と東電に損害賠償を求めて福島地裁に提訴した集団訴訟(生業訴訟第2陣)は23日、新たに214人が提訴した。弁護団によると、追加提訴は今回で最後で、原告は1846人にのぼった。
今回提訴した214人は、事故当時、福島県内や宮城県丸森町などに住んでいた住民。同種訴訟をめぐっては、先行した4訴訟について、昨年3月に国の基準を超す賠償支払いを東電に命じる控訴審判決が確定した。その一方で、最高裁第二小法廷は同6月、「現実の地震・津波は想定よりはるかに大規模で、防潮堤を設置させても事故は防げなかった」として国の責任を認めない判決を言い渡している。
この日は弁論もあり、原告側は「事故の事実をその目で確認してほしい」などとして、裁判官3人に福島第一原発の現場視察を求めた。
弁護団はこの日、弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士が退き、後任に渡辺純弁護士が就いたことを明らかにした。交代理由は「体調不良」と説明している。
23日に開かれた生業訴訟第2陣の弁論では、原告の意見陳述もあった。
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「普通の暮らしを奪った責任をきちんととってください」。事故当時、中学1年生で、福島県楢葉町から東京都内に避難した山内みなみさん(24)はこの日の意見陳述で語気を強めた。
原発事故前は楢葉町で、そば屋を営む両親と兄と生活していた。父は近くの川で釣った魚や山で採った山菜を天ぷらで提供していた。山内さんは「汗をかきながら一生懸命天ぷらをあげる父の姿は輝いていた」と振り返る。
事故で生活は一変した。山内さんは転校先の都内の学校で同級生からからかわれ、友人にも相談できず、中学2年生の冬ごろ、自傷行為をした。高校1年生の時には、医師から適応障害と診断された。
2015年に楢葉町の避難指示は解除され、18年に両親と兄は戻ったが、山内さんは大学進学などを理由に、今も都内に残って暮らす。山内さんは「国や東電は原発を『安全です』と住民に説明して造ったのに、謝罪も反省もしていない。被害者に対し、誠心誠意対応してほしい」と訴えた。【朝日新聞】