東京電力福島第一原発事故に伴う除染で出た汚染された土を福島県外で再利用する環境省の実証実験について、埼玉県所沢市の藤本正人市長は十六日、同省環境調査研修所(同市並木三)での事業に対し「市民の理解が得られることが大前提。理解なしには実施できない」との立場を明らかにした。市は同日の近隣住民五十人に限定した説明会の後も、より広い形での説明会開催を同省に要請するとしている。市議会本会議で城下師子(のりこ)議員(共産)の質問に答えた。(中里宏)
市議会には今月一日、同省の実証実験の概要案をまとめた資料が配られた。しかし、同研修所での埋設場所の広さや汚染土の量など、実験の実態が資料では分からないままとなっていた。このため大石健一議長が同省に十五日、市議会に対する説明会の実施を申し入れた。
藤本市長は答弁で「環境省から市に実証実験の話があったのは今年の六月二十八日。十一月十七日に説明会の日程が決まった。説明会の実施は私から申し入れた」と述べた。その上で「市民の理解が大前提と環境省に繰り返し申し上げてきた」と強調した。
一方で「除去土壌の再生利用は、風評被害に苦しむ福島県だけの問題ではなく、全国的に取り組まなければならない重要な課題。私としては当市として協力できることは協力していきたい」と持論を述べた。
十六日の説明会の対象が研修所の隣接二地区の住民に限られたことについて、並木和人・環境クリーン部長は、市街づくり条例の近隣住民への説明の規定を準用し、環境省と協議の上で、敷地境界から半径百メートル以内の住民にしたと明かした。
城下議員は、安全が確認されたと市が答弁した福島県内での実証実験について「南相馬市の盛り土は周囲に何もなく、飯舘村もわずか二十坪(約六十六平方メートル)ほどで周囲に人が住んでいない。(街中の)所沢市と条件が違いすぎる」と指摘した。
市内では、説明会が行われた同研修所前に約五十人が駆けつけて抗議を行うなど、市民による反対運動も活発化している。【東京新聞】