東京電力福島第一原発事故で飛散した放射性物質を含み、その後の除染作業で回収された福島県内の汚染土の再利用について、環境省は16日、県外で初めて行う実証事業に向け、実施場所の一つとなる同省環境調査研修所(埼玉県所沢市)で住民説明会を開いた。会場付近では抗議行動もあり、住民の理解を得られるかは見通せない。
汚染土再利用の実証事業が行われる環境調査研修所=埼玉県所沢市で
汚染土再利用の実証事業が行われる環境調査研修所=埼玉県所沢市で
同省によると、事業は国が再利用のために定めた土壌中の放射性セシウム濃度の基準(1キロ当たり8000ベクレル)以下の土を使い、一般には入れない敷地内の広場の一角で実施。長さ13メートル、幅5メートル、深さ1メートルの穴に遮水シートを敷き、汚染土20立方メートルを入れる。上に現地の土を50センチほどかぶせ、工事中や工事後の空間放射線量を調べる。着工時期は決まっていない。
この日の説明会は、研修所近くの住民だけが対象。自治会の掲示板で募集告知するにとどまり、参加者は約50人だった。
会場前では50人ほどが「除染土の再利用反対」と抗議の声を上げた。「さよなら原発in所沢連絡会有志」の村上三郎さん(70)=同市=は「対象地区外に住んでいるので説明会参加を断られた。そんなことで市民の理解が得られるのか」と話した。
実証事業は、同省関連施設の新宿御苑(東京都新宿区)の花壇でも実施予定で、21日に住民説明会がある。国立環境研究所(茨城県つくば市)でも実施を検討している。
福島県内の汚染土は福島第一原発周辺の中間貯蔵施設(同県大熊町、双葉町)に2015年から搬入。先月末時点で1336万立方メートルが保管されている。国は、その約4分の3に当たる1キロ当たり8000ベクレル以下の土を再利用し、汚染度の高い残りの土を45年までに県外の最終処分場に搬出する方針だが、候補地は未定。【東京新聞】