経済産業省の有識者会議「原子力小委員会」は8日、廃炉にする原子力発電所の建て替えを念頭に、安全性を高めた次世代原発の開発・建設を進めることを盛り込んだ原子力政策の指針を了承した。既存原発の運転期間についても実質的に60年を超えて認める。月内に政府へ報告する。新たな原発の建設を「想定していない」としてきた政府方針の転換となる。
指針は、経産省が11月に原子力小委に提示した、原子力政策の方向性と行動計画の原案をほぼ踏襲したが、具体的な実現時期などがないため「指針」とした。
8日の会議では、「脱原発」を掲げる委員からは「(指針は)長期的な対策で、拙速な議論だ」との意見もあったが、大方の委員はエネルギーの安定供給や脱炭素社会の実現に向けて将来的な原発の活用を支持した。
指針では、新たな原発の建設について「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉」とし、「まずは廃止決定した(原子)炉の建て替えを対象」と明記した。候補としては、既存の原発の仕組みを活用した「革新軽水炉」や「小型モジュール炉(SMR)」、高温ガス炉などが想定される。
また、既存原発の運転期間を巡っては、現在は最長60年としているが、原子力規制委員会による安全審査などで停止した時期を運転期間に算入せず、実質的に60年超の運転を可能にするとした。使用済み核燃料の再処理・活用、最終処分場の決定に向けて国が主体的に取り組む方針も掲げた。
経産省はエネルギー政策全般を扱う有識者会議「基本政策分科会」での議論も踏まえ、月内に政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」(議長・岸田首相)へ報告する。政府は来年の通常国会に、運転期間延長に必要な関連法の改正案を提出する考えだ。
【読売新聞】