原発事故で各地に避難した人たちが起こした集団訴訟で、東京電力に対し国の基準を上回る賠償を命じる判決が相次いで確定したことを踏まえ、国の審査会は10日、慰謝料の対象地域を拡大するなど賠償の指針を見直すことを決めました。
福島第一原発の事故を受けて、国の審査会は「中間指針」という賠償額の目安となる基準を定めていますが、原発事故で各地に避難した人たちが起こした集団訴訟では、これまで7件で基準を上回る賠償額を認める判決が確定しています。
これを踏まえて審査会は、指針の見直しが必要か検討するため、法律の専門家などの専門委員に依頼して判決の分析を進め、10日の会合で最終報告が行われました。
この中では、避難区域のうち比較的放射線量が高い「帰還困難区域」以外では賠償の対象となっていない「生活基盤が変わったことによる精神的な損害」が判決で広く認められたことについて「指針の策定当時、損害の実態が把握されていなかった」として、対象地域を拡大すべきとしました。
また「着のみ着のままで過酷な避難を余儀なくされた精神的損害」なども認められた判決があり、現在の指針では十分に考慮されていないとしています。
最終報告を受けて審査会は指針を見直すことを決め、今後具体的な内容を議論することになりました。
福島県では今も3万人近くが県の内外で避難を続けていて、指針の見直しは多くの避難者の慰謝料の算定に影響する可能性があります。【NHK】