原発事故時の避難計画は全く被曝(ひばく)することなく避難できる内容になっていなければ不十分か――。東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の運転差し止めを地域住民らが求めた訴訟で争われているそんな論点に対し、被告の東電側が「被曝線量をできるだけ低くするためのもの」と主張した。住民側は「被曝を受け入れるよう言っているようなものだ」と反発している。
避難計画をめぐっては、水戸地裁が昨年3月の判決で、内容に不十分な点があることなどを理由に、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)の運転差し止めを命じた。これを受け、2012年から新潟地裁で続く柏崎刈羽原発の訴訟でも、設備の安全性や地盤に加え、避難計画が争点として浮上した。
住民側は今年7月、昨年11月に公表された県のシミュレーションをもとに、避難には長時間かかることが想定されていると指摘。「被曝せずに避難することは不可能」とし、「避難計画には実現可能性がない」と訴えた。
東電「減災の考え方を基本理念とする」
これに東電側が反論。10月17日、避難計画を含む原子力災害対策は「被害を最少化し、迅速な回復を図る『減災』の考え方を基本理念とするもの」としたうえで、「住民の被曝線量を、合理的に達成できる限り低くするための措置を講じるもの」と述べた。
さらに、「不断の見直しを行って実効性の向上を継続的に図っていく性質のもの」とし、「原告らが言うように、『被曝をすることなく避難すること』を実現しない限り避難計画には不備があるとするのは、原子力災害対策の防災としての位置付けを理解しないもの」と指摘した。
【朝日新聞】