日本原子力発電が敦賀原子力発電所2号機(福井県)の安全審査資料を無断で書き換えた問題で、原子力規制委員会は26日、「不用意な書き換えが起きない制度が整った」として中断していた審査の再開を決めた。
書き換えられたのは、敷地内の地下から採取した地層の観察記録のデータ。将来地震を起こす可能性のある「活断層」の有無を調べるのに、重要な資料だった。原子炉などの重要施設の直下に活断層があった場合、規制委は再稼働を認めておらず、廃炉に直結する。2020年2月に書き換えを指摘し、21年8月、審査の中断を決めていた。
元資料には地層を肉眼で観察した結果が記述されていたが、その後顕微鏡で観察した新しいデータの結果が上書きされていた。書き換えは80か所に上り、このうち55か所は断層の活動性の否定につながる記述に変わっていた。一方で25か所は活動性があるとの判断につながる記述に変わっており、原電は「意図を持って変更した事実はない」「わかりやすさを考えた」と釈明していた。
規制委は中断を決めた際、「技術的な審議を行うには、資料の信頼性が確保される必要がある」と指摘。審査再開の条件として書き換え前のデータに遡れるようにすることなどを挙げる一方、原電への10回の立ち入り検査を通じて業務体制を確認した。原電は資料の作成過程を遡れるよう社内規定を改定するなど対策を取った。
敦賀2号機を巡っては、規制委の有識者会合が15年、重要施設の直下に多数ある破砕帯(断層)について「将来、活動する可能性がある」と評価している。審査は再開されても、長期化する公算が大きい。
【読売新聞】