原子力発電所を再稼働するには、原子炉等規制法に基づく原子力規制委員会の安全審査に合格したうえで、安全対策工事を終える必要がある。法令上はこの段階で再稼働できるが、各自治体は電力会社と安全協定を結んでおり、自治体の「同意」も事実上は必須だ。国は電力会社に安全の確保を求めつつ、自治体の理解を得る努力をするしかない。
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再稼働に向けたハードルが高いとされているのが、東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)と日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)だ。規制委の審査に合格したものの、自治体が同意する見通しがたっていない。
柏崎刈羽原発は2021年、テロ対策の不備などの不祥事が相次いで明らかになり、規制委が再稼働を禁止した。年末まで再発防止策などの検査を続ける。規制委の更田豊志委員長は24日午後の記者会見で「検査は政府の再稼働方針によって影響を受けるものではない」と述べた。
新潟県の花角英世知事は規制委の検査に加えて独自の検証を進めた上で「私の判断を示し、県民の信を問う」と説明している。西村康稔経済産業相は24日、首相官邸で記者団に「地元の理解を得るために、国が前面に立って様々な対応をしていきたい」と強調した。
東海第2は30キロメートル圏内の人口が約100万人と全国の原発で最も多く、茨城県などが災害対策基本法などに基づく避難計画を策定できずにいる。地元住民らが起こした再稼働差し止めの訴訟で、水戸地裁は21年3月、避難計画の作成遅れや内容の不備を理由に運転差し止めを命じた。避難計画がない状態で再稼働した例はない。【日本経済新聞】