福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について原子力規制委員会は、22日、臨時の会合を開き、東京電力が政府の方針に従って策定した海に流す計画を認可しました。
福島第一原発では、建屋に流れ込む地下水などのほか、溶け落ちた核燃料の冷却で生じる放射性物質を含む汚染水が現在も発生していて、浄化した後の水、いわゆる「処理水」を原発構内で保管しています。
政府はこの「処理水」について、トリチウムなどの放射性物質を基準を下回る濃度に薄めた上で来年春ごろから海に流すとする方針を決め、規制委員会はことし5月、東京電力が策定した実施計画を了承した上で、一般からの意見を募集しました。
規制委員会は22日、臨時の会合を開き、寄せられた1233件の意見について原子力規制庁から報告を受け、技術的な意見は670件で、「処理水」の濃度測定や設備の耐震面への懸念などがあったということです。
議論の結果、規制委員会は、東京電力の対応は妥当だとして計画を認可しました。
その上で、今後の検査で計画通りに進めているか確認するとしています。
東京電力は今後、福島県や地元自治体の了解を得た上で、海に流すために設ける海底トンネルの本体工事など、来年4月中旬ごろの設備完成に向けて工事を本格化させたい考えです。
ただ、地元や漁業者を中心に風評被害を懸念する声が根強く、政府と東京電力が実効性のある対策を示し、関係者の理解を得られるかが焦点です。
東京電力は「計画に基づく安全確保や人と環境への放射線影響など科学的根拠に基づく正確な情報の国内外への発信、放射性物質のモニタリング強化など、政府の基本方針を踏まえた取り組みをしっかり進めたい。あわせて、処理水の取り扱いに関する東京電力の考えや対応について説明を尽くし、みなさまの懸念や関心に継続して向き合い、ひとつひとつ応えることで多くの方に廃炉の取り組みへの理解を深めていただけるよう全力で取り組む」としています。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「国際基準との間の考え方など当初予定した時間と密度で十分な議論が尽くされた。基準が守られる限りにおいて人の健康や環境、地域の産品に影響を及ぼすことはありえないと考えている」と述べ、計画に基づいて処理水を流しても人の健康や環境などへの影響はないとする考えを明らかにしました。
また、地元や漁業者を中心に風評被害への懸念が根強い中、認可したことについては「漁業者の方々の反対や心理的な抵抗は理解できる。ただ、福島第一原発の廃炉作業を前に進めるには、苦渋の決断ではあるが、処理水の海洋放出は避けて通れない道だと考えている」と述べました。
廃炉作業を進める上で処理水放出の位置づけについて更田委員長は「タンクが減り、原子炉建屋に近い場所に広い作業スペースが取れるのは大変意味がある。一方で今後は、固体廃棄物や液体を含む不安定な廃棄物の安定的な管理など、ずっと難しい問題が控えていて、処理水放出は、最初の節目に過ぎないと思っている」と述べ、みずからの見解を示しました。【NHK】