ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー情勢が揺れている。資源の多くを海外に頼る日本では、発電に使う石炭や液化天然ガス(LNG)の価格高騰が電気料金の値上げとして生活を直撃。今夏は電力の供給力不足も懸念されている中、各党の「原発」を巡る公約には見逃せない変化があった。
自民党は「安全が確認された原子力の最大限の活用を図る」と明記。原発再稼働を進めるとしつつ、東京電力福島第一原発事故後に重点政策としてきた「可能な限り原発依存度を低減する」という言葉が、今回の政策集から消えた。安定した電力供給と、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)の実現には、脱炭素電源と位置付ける原発は不可欠と明確にした形だ。
ただ、経済界が求め続けている「原発の新増設」は打ち出していない。岸田文雄首相は「原発の技術は大事にしなければならない」と述べるにとどめている。
一方、連立与党の公明党は「将来的に原発に依存しない社会を目指す」という立場を維持した。
野党で原発再稼働の推進を主張するのは、日本維新の会と国民民主党、NHK党。維新の松井一郎代表は電力供給力不足を念頭に「安全な原発を短期間動かすべきだ」と訴える。ただ、維新と国民両党は原発の新増設は否定。国民は主要政党としては唯一、小型原子炉など開発中の次世代炉への建て替えが必要との立場を明確にしている。
立憲民主党は「原発の新増設を認めない」と明記した。昨年の衆院選で掲げた「原発ゼロ社会」は消え、「原発に依存しない社会の実現」という表現に変わった。2030年までに太陽光や風力など再生可能エネルギーと省エネに公的資金50兆円を含む総額200兆円を投入し、雇用創出と経済成長を目指すという。
原発の「即時ゼロ」や「即時禁止」を掲げるのは、共産党とれいわ新選組。共産の志位和夫委員長は「再稼働に絶対反対だ。福島のことを忘れたのか」、れいわの山本太郎代表は「この国で原発を続けられるかというと厳しい。地震がある」と強調している。社民党は原発ゼロ基本法案の成立を目標とする。
温暖化対策のため先進国では全廃が必要とされる石炭火力発電を「30年までにゼロ」にするとしたのは、前回衆院選と同じく共産、社民、れいわの3党にとどまった。【東京新聞】