東京電力福島第一原子力発電所事故で 被曝ひばく した人について、子孫に遺伝的な影響が起こる可能性があると誤解している人が約4割に上ることが、環境省が初めて実施した全国調査でわかった。同省は福島県民への差別や偏見につながる恐れがあるとして、改めて情報発信に力を入れている。
被曝による遺伝的な影響を巡っては、長崎、広島原爆の被爆者調査で遺伝病増加などの事実は確認されていない。また、放射線による人体や環境への影響を評価する国際機関「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」は昨年、福島原発事故で「遺伝的影響はみられない」とする報告書をまとめている。
同省は昨年、全国を10ブロック(8地方、東京都、福島県)に分けた上でブロックごとに420人、計4200人を対象にオンラインでアンケート調査を実施。福島原発事故による被曝で福島県民に遺伝的影響が起こる可能性について、「高い」または「非常に高い」との回答が全体で41・2%だった。
ブロック別では、北海道49・8%、四国46・7%、中部44・1%、近畿42・6%、東京都41・4%などと高かった一方、福島県は26・9%と低かった。
同省は「結婚や妊娠などで差別や偏見につながる可能性がある」とし、専用サイトを設け、大学生らが被曝などの知識を学ぶイベントを主催。正しい情報を広める活動に取り組んでいる。【読売新聞】