東京電力福島第一原子力発電所の事故で、埼玉県内などへ避難した住民らが国と東京電力に損害賠償を求めた国家賠償請求の集団訴訟裁判で、さいたま地裁は20日、東京電力に賠償を命じる判決を言い渡しました。国への請求は棄却しました。
この裁判は、福島県の帰還困難区域内に住んでいた人と、県内などに自主避難した人、合わせて95人が、慣れない土地での避難生活を余儀なくされ精神的苦痛を受けたとして、国と東京電力に、合わせて11億円の損害賠償を求めたものです。これまでの裁判で国は「津波を予見できなかった」としていて、東京電力は「国の指針に基づき、十分な賠償を済ませた」と主張していました。
20日の判決で、さいたま地裁の岡部純子裁判長は、津波に対する国の対策について「福島第一原発の敷地の高さを超える津波の到来が予見できたのに、規制権限を行使しなかった」と指摘した一方「十分な防潮堤が設置されたとしても、規模などが大きく異なった今回の津波を防護できたとは認められない」などとして、国に対する訴えを退けました。
その上で「精神的損害は賠償されるべきである」などとして、東京電力に原告のうち63人に対して、合わせて6541万円の賠償を命じました。
判決を受けて、原告団が記者会見を開き、現在の心境を述べました。
原告の1人瀬川芳伸さんは「何と言えばいいか、胸がいっぱい・・」瀬川芳伸さんは「今回の裁判で、国や東電から、ここがよくなかったという言葉もなく、こちらが悪いかのように言いくるめられた。声を上げることは勇気がいることだが、これからも戦っていきたい」と述べました。
また代理人の吉廣慶子弁護士は「一部の賠償額が認められたが、原告が受けた被害に比べたら低いもの。国に勝つことで、賠償額の上乗せをしていきたい」として、原告の意向を確認した上で、控訴する方針を明らかにしました。
福島第一原発をめぐる集団訴訟は、全国各地で起こされていて、これまでの判決は、いずれも東電の責任を認める一方で、国の責任は裁判所によって判断が分かれています。
最高裁は、国の責任の有無について、この夏にも統一的な判断を示す見通しです。【共同通信】