日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)で重大事故が起きた際の広域避難計画をめぐり、東海村議会の原子力問題調査特別委員会(原特委)は1日、速やかな策定を求める請願を賛成多数で採択した。
請願は村商工会が、東海第二の再稼働を求める請願とともに、昨年6月の村議会に提出した。原特委は、村議18人のうち議長を除く17人で構成されているため、3月の本会議でも採択される見通しとなった。
採択されれば、「安心して健全な経営を維持継続させるために、東海第二の再稼働に伴う広域避難計画の策定の議論を進めていただくようお願い申し上げます」と記した意見書を、議会の総意として、首相、知事、村長宛てに提出することになる。
東海第二の再稼働判断では、立地・周辺自治体の避難計画の存在が焦点となる。請願の採択が再稼働につながるとして反対する議員が懸念を表明し、議論が紛糾していた。
1日の原特委でも、賛成、反対それぞれの議員が意見を述べた。
原発維持に理解がある最大会派「新政とうかい」の議員は「多くの村民が避難計画を早く作ることを望んでいる」「東海第二には今も使用済み核燃料が保管されており、危険がある。避難計画は再稼働の議論とは分けて判断すべきだ」「まず計画にして、改定を重ねて実効性を高めればいい」などと主張した。
一方、他の会派の議員は「実効性ある計画かどうかが大切で、早く作れば村民が安心するというのは雑な意見だ」「避難計画の専門家の意見を聞いておらず、判断できる状況になっていない」「再稼働のために避難計画を作るべきだという議会の意思表示になってしまう」などと反論したが、採決の結果、委員長を除く新政とうかいの9人が賛成し、採択が決まった。再稼働を求める請願については継続審議となった。
原発反対を訴える市民団体「311を忘れない東海村アクション」は、避難計画策定には慎重を期すべきだという請願を出しているが、不採択となる公算が大きい。
商工会の請願に反対した恵利いつ議員(光風会)は「実効性を高めて計画を作ろうとしている村職員に対し、内容はいいから早く作れという圧力になってしまうのでは」と懸念する。
原特委の鈴木曻委員長(新政とうかい)は閉会後、報道陣に「採決の強行は本当はしたくはなかったが、結論を出すためには少数意見はどこかで切り捨てないといけない」と説明した。【朝日新聞】