愛媛県にある四国電力の伊方原子力発電所3号機について、広島地方裁判所は、広島県などの住民が再稼働を認めないよう求めていた仮処分の申し立てを退ける決定を出しました。
愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機について、広島県や愛媛県の住民7人が去年3月に「大地震で重大な事故が起きる危険がある」として、再稼働を認めないよう求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てました。
四国電力は、伊方原発で起きうる地震の最大の揺れを、周辺にある九州、四国、近畿にかけてのびる活断層が、長さおよそ480キロにわたって連動した場合などを想定して算定し、仮処分の手続きでは、その大きさが妥当かどうかが争われました。
4日の決定で、広島地裁の吉岡茂之裁判長は「地震の大きさは、観測地点の地盤ごとに増幅などの特性が異なるため、伊方原発以外での原発で基準を超える揺れが観測されたからといって、危険性があるとは言えない」と指摘して、住民の申し立てを退けました。
伊方原発3号機は、おととし12月から運転を停止中で、四国電力は職員の保安規定違反が発覚したことを受けて、当初、10月を目指していた再稼働の時期を「未定」に変更し、地元自治体の理解が得られ次第、再稼働したいとしています。
地裁前の支援者ら落胆
広島地方裁判所の前では、仮処分を申し立てた住民の関係者2人が「差止ならず」とか「非常識決定」と書かれた紙を掲げると、集まった支援者たちは落胆の声を上げました。
4日の決定について、住民の弁護団長を務める河合弘之弁護士は「到底許せない判断が出たので、広島高裁に即時抗告を行う」と話していました。
伊方原発3号機めぐる これまでの経緯
愛媛県にある伊方原発3号機をめぐっては、10年前に起きた東京電力の福島第一原発の事故のあと、愛媛、広島、大分、それに山口の住民たちが、運転の停止を求める仮処分の申し立てを各地の裁判所に相次いで起こしています。
このうち、広島高等裁判所は平成29年12月、熊本県にある阿蘇山の噴火の危険性を指摘して、運転の停止を命じる決定を出し、伊方原発3号機は運転できなくなりました。
四国電力が異議を申し立てた結果、平成30年9月、広島高裁の別の裁判長が「巨大噴火の可能性が根拠をもって示されたとはいえない」として、決定を取り消し運転を認めました。
去年1月には、広島高裁が山口県の住民が行った仮処分の申し立てを受けて「地震や火山の噴火によって重大な被害が及ぶ危険がある」として、再び運転を認めない決定を出しました。
この決定も、ことし3月、広島高裁の別の裁判長が「原発の安全性に影響を及ぼす大規模な自然災害が発生する可能性が高いとはいえない」として、取り消し運転を認めました。
このように、伊方原発3号機の安全性をめぐって、異なる司法判断が相次ぎ、運転の停止と再開が繰り返されてきました。
一方、四国電力は、ことし3月に仮処分の決定が取り消されたことを受けて、テロ対策などの施設が完成する10月に再稼働する計画でしたが、四国電力の職員による保安規定違反が発覚したため、再稼働の時期を「未定」に変更し、地元自治体の理解が得られ次第、再稼働したいとしています。【NHK】