東京電力福島第一原発事故で福島県から埼玉県に避難している九十六人が、国と東電に損害賠償を求めた訴訟が二十二日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)で結審した。判決期日は今後指定される。
原告は帰還困難区域に住んでいたり、自主避難したりした住民ら。住み慣れた土地での生活から引き離された精神的苦痛に対する慰謝料など、計十一億円の損害賠償を求めている。
原告側はこの日の意見陳述で、政府が二〇〇二年に公表した地震予測「長期評価」に基づいて津波を想定していれば、国は原発の安全性を損なう恐れを認識できたと指摘。「適切な津波対策を怠ってきた不作為は罪深い」と訴えた。
国は津波を予見できなかったと主張し、東電は十分な賠償を済ませたとしている。
裁判は事故から三年後の二〇一四年三月に起こされた。原告は三度の追加提訴をへて二十九世帯九十六人となった。弁護団によると、避難生活の中で亡くなったり、長期に及ぶ審理に疲れて訴訟を取り下げたりした人もいたという。
結審後の記者会見で、子ども二人と入間郡に避難している原告の女性(40)は「私たちがどれだけ苦労して、泣いて、挫折してきたか全く鑑みていない言い分だ」と国や東電を批判した。
全国の同様の集団訴訟では、十六件の一審判決全てが東電の責任を認めている。一方、国の責任については八件が認定、八件が否定と判断が割れている。高裁判決は三件のうち二件が国の責任を認めている。
【東京新聞】