東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)でテロなどを防ぐ核物質防護体制の不備が相次いだ問題で、東電が22日に原子力規制委員会へ提出した報告書は「組織の風通しの悪さ」を一因に挙げた。報告書と同時に公表された第三者委員会のアンケートには、同原発所員の4分の1が正直に物を言えない風土があったと回答。2002年のトラブル隠しなど過去の不祥事でも問題となった「物言えぬ組織風土」がなお根深く残っていることを示している。
規制委や東電によると、柏崎刈羽原発では20年3月以降、複数箇所で侵入検知設備が機能を失っていた。20年9月には運転員が同僚のIDカードで中央制御室に不正入室した。
報告書では、これらの問題が発生した原因の一つに、核物質防護部門の風通しの悪さを挙げた。それは、東電が設置した、弁護士ら第三者による独立検証委員会のアンケートの結果や社長らへのヒアリングから浮かび上がる。
アンケートは、核物質防護を含む原子力部門の社員3994人を対象とし、3860人(96.6%)から回答を得た。
一連の不祥事が発生した当時、「正直に物を言えない風土があったと感じるか」との設問に、同原発では「感じていない」が25.6%、「どちらかというと感じていない」が28.8%で計54.4%だった=グラフ参照=。一方で、「感じている」は9.1%、「どちらかというと感じている」は17.9%で、計27.0%の社員が風通しの悪さを指摘した。
自由記載では、物を言えない原因について「根強く残る上司への過剰な忖度(そんたく)」「上司が高圧的な態度を取り、言い出せる雰囲気づくりがされていない」などの意見があった。「いわゆる『学習性無気力』で、正直に言えないわけではないが、言ったところで改善されないので、だんだん言わなくなる」という切実な回答もあった。
独立検証委は「問題提起をすることが評価されず、不利益を受けかねないと感じていた職員がいた」としている。
東電は02年のトラブル隠しなど過去の報告書でも、風通しの悪さの問題を指摘してきた。牧野茂徳原子力・立地本部長は、22日の会見で「(柏崎刈羽原発では)上司が現場把握をしていないようなケースもかなり確認されている。そういったことで物を言いやすい環境が醸成されていなかった」と釈明した。
独立検証委は検証の中で、「正直に物を言えない風土が十分に解消されていない。疑問点や問題意識を率直に表明することに心理的な抵抗を感じるような環境が残存していた」と推察。コミュニケーションの現状や部門をまたぐ情報共有などの検証を求めている。【共同通信】