中国電力島根原発(松江市)2号機が15日、再稼働に向けた安全審査に合格したことを受け、焦点は地元同意に移る。中国電力は事前了解権(同意権)がある地元自治体を島根県と松江市に限っているが、事故時のリスクがある30キロ圏内の周辺自治体(鳥取県と島根・鳥取両県内の5市)には同意権がないため不満が根強い。原子力規制委員会の審査項目外である避難計画についても、不安が解消されておらず、課題は山積したままだ。
同意権を巡る調整は停滞している。中国電力は8月、島根県内の原発周辺3市(出雲、安来(やすぎ)、雲南(うんなん))に対し、同意権の付与を「困難」として事実上拒否した。県は重要な局面では従来の書面による意見照会ではなく、会議を開いて3市の意見を直接聞く代替案を提示。3市は9月上旬までに容認したが、引き続き同意権を求めるという。
また、中国電力は鳥取県と同県内2市(米子(よなご)、境港)にはまだ回答しておらず、平井伸治知事は8月19日の定例記者会見で「(同意権が)あり得ないという話なら即刻突き返さなければならない」とけん制している。
島根原発は全国で唯一、県庁所在地にあり、原発事故時に災害対策本部が置かれる島根県庁は原発から南東に約8・5キロしか離れていない。事故の規模が大きく避難指示が出れば、対策本部は住民避難の後に原発の南西28キロの出雲合同庁舎(出雲市)に移るが、それ以上の想定はしておらず、課題が残る。
避難計画では、島根県民のうち9万7000人が避難する岡山県内の27市町村のうち、避難所の運営マニュアルの作成が完了しているのは20市町。17万1000人の避難先となる広島県内では、22市町中11市町にとどまる。反原発運動を長年続ける元松江市議の芦原康江さん(68)は「周辺自治体も立地自治体と同様に事故のリスクを負っているから、同意権を認めないのはおかしい。避難計画の不備は、事故を過小に考えているからではないか」と批判している。【毎日新聞】