大手電力会社8社の株主総会が25日、各地で開かれた。原発の再稼働の動きがある関西、四国、中国各電力では、株主から安全性などへの疑問の声が上がったが、経営トップらからは原発推進に意欲を示す発言が相次いだ。「脱原発」などを求める株主提案は、いずれも否決された。
関西電力の総会では、運転開始から40年を超える老朽原発の美浜3号機(福井県美浜町)が23日に再稼働したことを受け、原発の設備の安全性や事故時の対応などを尋ねる質問が出た。
出席した京都市の門川大作市長は「原発がどうしても必要だとしても最低限にとどめるべきだ。事故を繰り返さないためには脱原発が必要だ」とし、既存原発の活用や建て替えの検討を目指す中期経営計画の抜本見直しを求めた。これに対し、森本孝社長は「二酸化炭素の排出量や経済性の面で原発は優れている」と反論し、保有する原発全7基の稼働を目指す考えを強調。洋上風力などの導入も進める考えも示した。
新型コロナ対策で座席数を大幅に減らしたため、来場した株主は190人と、記録が残る1985年以降で最少だった。原発からの撤退や再エネでの代替などを求める株主提案はいずれも否決された。
関電は歴代役員らが金品を受け取っていた問題を受け、経営体制を刷新して業務改善計画を進めている。総会では「一過性の取り組みにしないでほしい」という神戸市の指摘に対し、森本社長が「信頼回復に終わりはない。実行状況を検証し、必要に応じて改善策を加える」と答えた。
10月に伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働を控える四国電力の総会では、昨年1月に外部電源が一時喪失して核燃料プールの冷却装置が43分間停止するなどトラブルが続発したことに対し、株主から管理能力の低下を指摘する質問が飛んだ。長井啓介社長は「個々の原因の究明と対策はもとより、トラブルの背景を深掘りして安全性の向上に取り組む」と述べた。原発活用を進める全取締役の解任を求める株主提案は否決された。
中国電力は島根原発2号機(松江市)の再稼働の前提となる審査書案が23日に原子力規制委員会から了承された。総会で会社側は「安全性を不断に追求し、島根2号機、3号機の再稼働、運転開始に取り組みたい」とし、再稼働禁止や廃炉を求める株主提案は否決された。建設計画がある上関原発(山口県上関町)について役員は「安定供給、温暖化防止の観点から原発の建設は重要」と述べた。【朝日新聞】