関西電力は23日、運転開始から44年たつ美浜原子力発電所(福井県美浜町)3号機を10年ぶりに再稼働させた。東京電力福島第1原発の事故後に「運転期間は原則40年、最長20年延長可能」とするルールができてから全国で初めての40年超原発の運転となる。脱炭素と電力の安定供給の両立に原発は重要だが、高齢化する原発にはより慎重な安全性の確認が求められる。
午前10時、原子炉を起動させた。10年間停止していたため関電のOBも動員して安全確認を続けた。29日にも送電を始め、7月下旬に本格運転に移る計画だ。
運転期間は当面4カ月となる。航空機の突入といったテロ対策として義務付けられている「特定重大事故等対処施設」が設置期限の10月25日に間に合わず、10月23日から再び点検に入る。2019年時点では完成は期限より1年半遅れているとしていた。
関電では高浜原発(同県高浜町)1、2号機も運転開始から40年を超える。原子力規制委員会から運転延長の認可を得たが、テロ対策施設を設置期限までに完成させられず再稼働の時期は見えない。
関電は40年超原発3基のテロ対策施設に2000億円超を投じる。すでに再稼働している4基をあわせ、計7基の安全対策に約1兆2100億円をかける。
全国の原発は11年の東電福島第1原発の事故後に相次ぎ稼働を止め、建設中を含め国内60基のうち24基の廃炉が決まった。運転40年超原発は原子力規制委の審査に合格すれば最長60年まで稼働できる。
40年超原発を巡っては関電の3基のほかに、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)が安全審査に合格している。しかし地元の合意形成などに時間がかかり再稼働のめどは立っていない。
運転から40年に満たない原発について、全国でこれまでに9基が再稼働した。温暖化ガスを2030年度に13年度から46%減らすとした目標の達成に向け、原発は大きな要素となる。全国の原発でも運転期間が延びるなか、高齢原発の活用の道筋ははっきりしていない。
美浜3号機は1976年に営業運転を始め、東日本大震災後の2011年5月から耐震性向上工事などを含めた定期点検のため稼働を止めてきた。原子力規制委の運転延長の認可を経て、21年4月には原発が立地する福井県の杉本達治知事が再稼働に同意した。
美浜3号機は出力82万6000キロワットの中規模原発。関電にとっては火力発電に使う燃料の差し替えにより単純計算で月25億円の収益改善が見込める。ただ、減価償却や修繕費などの負担もあり、関電は損益への影響について「現時点ではプラスかマイナスかもわからない」としている。【日本経済新聞】