東京電力福島第一原子力発電所の処理水を基準を下回る濃度に薄め、海に放出する方針を先月政府が決定したことを受けて、風評対策などを議論する国の「ワーキンググループ」の初会合が福島市で開かれ、地元関係者からは対策の徹底を求める意見や政府の決定のしかたを批判する意見が出されました。
福島第一原発で増え続けるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、政府は先月、2年後をめどに、基準を下回る濃度に薄め海に放出する方針を決めました。
これを受けて、風評対策などを議論するため関係閣僚会議のもとに設けられた各省庁の副大臣などでつくる「ワーキンググループ」の初会合が福島市で開かれ、県や地元関係者が参加しました。
この中で、福島県の鈴木副知事は「風評対策を徹底するとともに、水産物の全量が適正な価格で取り引きされ、関係者が安心して事業を営めるよう国が前面に立って進めてほしい」と要望しました。
また県商工会議所連合会の代表は「事故から10年たっても風評被害は払しょくされていない。後から賠償するのではなく、一定期間国が買い取るなど一定の収入補填(ほてん)を行い、関係者がやる気をなくさないための支援を検討してほしい」と訴えました。
このほか、会合では、対話と理解が十分に深まらない中で海洋放出が決定されたなど、政府の決定のしかたを批判する意見も出されました。
国は、ワーキンググループで議論を継続し具体的な風評対策をまとめる方針です。
県商工会議所連合会 渡邊会長「賠償先取りを」
会合が終わったあと、福島県商工会議所連合会の渡邊博美会長は「東京電力による風評被害の賠償は、実害の証明がないとできないとされているためこれまでも賠償を求める側の負担になっており、こうしたやり方を踏襲するようでは『絵に描いた餅』になってしまう。賠償を先取りすることで漁業者や仲買人のモチベーションにつながるので、まず賠償請求の方法の在り方を国が示すべきだ」と述べました。
県農業協同組合中央会 菅野会長「一方的に決定された」
福島県農業協同組合中央会の菅野孝志会長は、会合の中で「十分に対話せず理解が深まらない中で一方的に海洋放出が決定された。国や東電と県民・国民との信頼関係は完全に失われており、重く受け止めるべきだ」と国の対応を批判しました。
会合のあと報道陣対して「課題はたくさんある。きょうはしんしに向き合おうという姿勢は感じた。今後も国は、ひざ詰めで意見交換する場を増やしていってほしい」と話していました。【NHK】