プラント大手の日揮ホールディングス(HD)は、安全性に配慮した次世代の原子力発電所プロジェクトに参加する。米新興企業が開発した小型原子炉を使い、2020年代末の商業運転を目指す。世界的に脱炭素への対応が急務になるなか、温暖化ガス排出抑制につながる小型原子炉を選択肢の一つとする機運が高まってきた。
日揮HDが参加するのは、「小型モジュール炉」と呼ばれる原子炉を使う発電所の建設。米新興のニュースケール・パワーが開発し、他社に先駆けて20年夏に米規制機関の技術的な審査が終了した。複数の原子炉をまるごとプールに沈めて冷却するのが特徴だ。
東京電力福島第1原子力発電所の事故では非常用電源が被害を受けて冷却水が循環できなくなり、原子炉を冷やす機能が失われた。ニュースケールの方式は冷却水の供給が止まっても、プールの水が全て蒸発するまでに1カ月かかる。その間に熱が下がり、炉心溶融(メルトダウン)につながりにくくしている。
まず米アイダホ州で出力60万~70万キロワット級の発電所を建設する。日揮HDはニュースケールに4000万ドル(約44億円、約3%)出資した。同社の親会社で米大手エンジニアリング企業のフルアと共同で、建設の管理などを受け持つ。
将来は日揮がプラント建設で得意としてきた、中東や東南アジアでの建設も視野に入れる。従来の100万キロワット級の大型原発は建設に1兆円以上かかる。ニュースケールの小型原子炉を使う場合、90万キロワット超の発電所で3000億円程度に抑えられるという。
米政府は小型原子炉の研究開発を後押し。日本政府も20年の「グリーン成長戦略」で小型原子炉について「海外の実証プロジェクトと連携した日本企業の取り組みを積極的に支援する」とした。
先進国の原発は老朽化が進んでおり、小型原子炉は既存の原発の置き換えや、脱炭素で需要が高まる水素の生成用途などで需要が見込まれている。【日本経済新聞】