中国電力の島根原子力発電所2号機(松江市)が、5月にも再稼働に向けた安全審査に合格する見通しになった。26日の原子力規制委員会の会合で、審査の議論がほぼ終了した。合格すれば中国電力では初めて。再稼働には安全対策工事と地元同意などが必要になる。審査に合格しても再稼働できていない原発は多く、地元同意が鍵になる。
審査の議論終了を受け、規制委は事実上の合格証である「審査書案」を5月にもとりまとめる。同案がまとまれば、一般からの意見公募などを経て正式に合格する。
2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故を踏まえ、規制委が策定した新規制基準に合格した原発は再稼働が認められる。島根原発2号機は82万㌔㍗の沸騰水型軽水炉(BWR)。県庁所在地にある全国で唯一の原発だ。合格すれば20年2月の東北電力の女川原子力発電所2号機(宮城県)以来となる。全国では17基目で、福島第1原発と同型の「沸騰水型」としては5基目となる。
再稼働には島根県など立地自治体の同意が不可欠になるほか、避難計画の策定が必要な30キロ圏内に一部が含まれる鳥取県の動向が鍵となる。今は立地自治体だけが持つ再稼働の事前了解権を定めた安全協定を鳥取県が求めているためだ。
中国電力は同原発が再稼働すれば、年間320億円の燃料費節約が可能としている。また二酸化炭素の排出量も年間260万㌧削減できるとしている。同社の19年の年間排出量の約9%にあたる。
原発の稼働の是非を巡っては18日、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)が原発事故発生時の周辺住民の避難計画が未整備であることを理由に、水戸地裁が運転を認めない判決を出した。島根第2原発は、原発から半径30キロ圏内に約46万人が住む。鳥取県の境港市や米子市の一部も含まれる。30キロ圏内の自治体では事故発生時の避難計画を策定し、実効性を高める議論などが進んでいる。
他の原発では、合格後も安全対策工事や地元同意の手続きに時間がかかり、7基が再稼働に至っていない。関西電力の高浜1、2号機(福井県高浜町)と美浜3号機(同県美浜町)は、立地する町は同意しているが、県が同意していない。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の6、7号機は、監視装置の故障などの問題で規制委が再稼働手続きを凍結、地元も態度を硬化させており見通しが立たないでいる。
【日本経済新聞】