愛媛県にある四国電力伊方原子力発電所3号機について広島高等裁判所は、「原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害が発生する可能性が高いとはいえない」として去年1月の仮処分の判断を取り消し、運転を認める決定をしました。
愛媛県にある伊方原発3号機について、広島高等裁判所は、去年1月、山口県南東部にある島の住民3人の申し立てを受け、地震や火山の噴火による具体的な危険があるとして、運転を認めない仮処分の決定を出しました。
四国電力が異議を申し立てたのを受けて、広島高裁の別の裁判長のもと、原発の敷地の近くに活断層があるかどうかや、およそ130キロ離れた熊本県の阿蘇山で巨大噴火が起きた場合の影響などが争われました。
18日の決定で、広島高裁の横溝邦彦裁判長は、去年の仮処分の判断を取り消し、運転を認めました。
決定では、地震の揺れについて「海上探査の結果、原発の敷地の至近距離に活断層はないとした四国電力の評価に不合理な点はなく、南海トラフの地震による揺れの評価も不合理とは認められない」と指摘しました。
また、阿蘇山の噴火については「今後数十年か100年程度の間の噴火の危険については専門家の間でも意見が分かれ、現在の科学的見解では、原発の運転期間中に破局的噴火が発生する可能性が高いとはいえない」と指摘しました。
そのうえで「原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害が発生する可能性が高いとはいえない」としました。
伊方原発3号機をめぐって四国電力は、再稼働に向けて設置が義務づけられたテロ対策などの施設が完成することし10月までは、運転停止が続くという見通しを示していて、今後、再稼働するまでには半年以上かかるとみられます。
住民側の弁護団長「極めて不当な決定」
午後2時すぎ、広島高等裁判所の前で住民側が「不当決定」「瀬戸内の海は見捨てられた」などと書かれた旗を掲げると、集まった人たちからは落胆の声があがりました。
住民側の弁護団長の中村覚弁護士は「四国電力の言い分をうのみにした極めて不当な決定だ。原発を差し止めるまで戦い続ける」と話していました。
四国電力「決定は妥当 不断の安全対策に取り組む」
今回の決定について、四国電力原子力部の佐川憲司副部長が広島高等裁判所の前で取材に応じ「決定は3号機の安全性が確保されていると認めていただいた妥当なものだ。安全性の向上に終わりは無いと肝に銘じ、不断の安全対策に取り組んでいきたい」と話しました。また、3号機の再稼働については新たな規制基準で設置が義務づけられているテロ対策などの施設が完成したあと、10月下旬になる予定だと明らかにしました。
広島高等裁判所の今回の決定について、四国電力の長井啓介社長はコメントを発表しました。
この中では「伊方原発3号機の安全性は確保されているとの、当社のこれまでの主張が裁判所に認められたものであり、妥当な決定をいただいたと考えている」としています。そのうえで「伊方原発3号機は、四国における安定的かつ、低廉な電力供給を支える基幹電源だ。今後とも安全性の向上に終わりはないことを肝に銘じ、特定重大事故等対処施設のしゅんこうを含む、安全対策に不断の努力を重ねていく」としています。
愛媛 伊方町長「安全安心が大前提」
広島高等裁判所の決定を受け、原発が立地する愛媛県伊方町の高門清彦町長は報道陣の取材に対し「司法の判断なので町としてのコメントは差し控えたい」と話しました。
そのうえで「町の経済に関しては、原発が止まっていることのデメリットもあると思うが、それ以上に発電所に関しては安全安心が大前提だ。長期間にわたる運転停止で技術の習熟度という点で住民から不安の声もある。町としても細心の注意を求めていきたい」と述べました。
【NHK】