11日に10年を迎えた東日本大震災からの復興は、歴代政権が最重要課題に位置付けてきた。だが、復興の最前線に立つべき閣僚が被災地の感情を逆なでする発言で辞任する問題が続発。前首相の安倍晋三氏は東京電力福島第一原発事故の影響を軽んじるような発言を世界に向けて行い、事故で苦しむ多くの人たちを傷つけた。
◆わずか9日目で
「知恵を出さないやつは助けない」。2011年7月、復興に関する最初の担当閣僚となった菅直人内閣の松本龍担当相は、訪問した岩手県の達増拓也知事にこう高圧的に発言。宮城県の村井嘉浩知事には「こっちも突き放すところは突き放す」などと語った。被災地から批判が相次いで就任9日目で辞任した。
続く野田佳彦内閣でも、鉢呂吉雄経済産業相が福島第一原発を視察した直後、記者団に防災服をすりつけるしぐさをしながら「放射能をうつしてやる」と失言。直後に辞任した。
◆政権交代しても続く
12年末の政権交代で発足した安倍内閣でも、問題発言は収まらなかった。石原伸晃環境相は、原発事故で出た除染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設建設に向けた被災地との交渉について「最後は金目かねめでしょ」とこぼした。福島県側が「ふるさとを思う気持ちを踏みにじる」などと非難し、撤回に追い込まれた。
被災者の気持ちを踏みにじるような発言はやまず、今村雅弘復興相は、被災地が「東北で良かった」と失言して辞任。桜田義孝五輪相は、出席した自民党議員のパーティーで、その議員のことを「復興以上に大事」と述べ、その日のうちに更迭させられた。
◆安倍さん、それ本当?
原発事故から10年たった今でも特に問題視されているのは、首相当時の安倍氏の発言だ。
13年9月、国際オリンピック委員会(IOC)総会での東京五輪招致に向けた演説で、福島第一原発の状況について「アンダーコントロール」と国際社会に言い切った。実際は同原発では放射能漏れが続き、管理されていると言うにはほど遠い状況だった。発言から7年半が過ぎても、廃炉作業は難航し、福島の人たちの帰還もままならない。
【東京新聞】