東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県から千葉県に避難した住民ら43人が東電や国に計約18億7300万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(白井幸夫裁判長)は19日、国と東電双方の責任を認め、東電に計約2億7800万円、うち約1億3500万円を国とともに支払うよう命じた。高裁で国の責任が認められたのは2例目。
原発事故の国の責任が問われた訴訟では、2020年9月の仙台高裁判決が国の責任を認めた一方、21年1月の東京高裁判決は否定した。東京高裁でも判断が割れる形となった。
白井裁判長はまず、原発事故の国の責任について「当時の科学技術の水準に照らして、対策を命じなかったことが著しく合理性を欠いていたと言える場合に違法となる」と指摘した。
地震や津波の発生予測としては、福島沖で巨大な地震が起き得るとした「長期評価」と、津波が低く算出される「津波評価技術」がいずれも02年に公表されたが、その科学的信頼性は同等だったと認定。津波評価技術に基づいて対策を講じた国の判断について「同程度の信頼性がある長期評価の知見を判断の基礎としないことは、著しく合理性を欠く」とした。
その上で、防潮堤の設置やタービン建屋に水が入らないようにする措置を講じていれば、事故原因となった原発の全電源喪失は避けられたとし、長期評価の公表から遅くとも1年後には東電に対策を求めることができたと判断した。
住民側は、故郷の人間関係や豊かな自然を失ったとして「ふるさと喪失慰謝料」も求めていた。白井裁判長は、生活環境が基盤から失われた場合や、避難先での生活を継続したり、帰還を断念したりすることによる精神的損害を認め、避難生活による慰謝料とは別に賠償すべきだとした。1審・千葉地裁判決(17年9月)は東電のみに約3億7000万円の支払いを命じていた。【毎日新聞】