原子力規制庁の担当者が12日、柏崎市議会で、東京電力柏崎刈羽原発の中央制御室への不正入室問題について「現時点では(東電の)適格性の審査に該当しないと考えている」と述べた。この問題では、規制庁から原子力規制委員会への報告の遅れが、適格性を認めた審査に影響したのではないか、との疑いも指摘されていたが、規制庁はその見方を否定した。
規制庁で核セキュリティーを担当する吉川元浩管理官ら幹部が、市議会全員協議会にオンラインで出席した。不正入室に加えて安全対策工事の一部未完了という問題も発覚した東電に、原発を運転する適格性を認めた規制委の判断の妥当性が、質疑の焦点となった。
不正入室問題は、規制委の事務局を務める規制庁が昨年9月21日に東電から報告を受けていながら、先月まで規制委委員に報告されていなかった。規制委は昨年9月23日に東電の適格性を認め、10月に原発の運用ルールである保安規定が認可された。
吉川管理官は、委員への報告が先月となった点について「反省点」と述べ、改善を図る考えを示した。
ただ、「(規制庁から)報告が上がれば、規制委で適格性が認められることはなかったのでは」という市議の質問に対しては、吉川管理官は、不正入室問題は核物質防護規定に違反するが、保安規定に直ちに結びつくものではない、との見解を示した。
その上で、核物質防護規定違反の観点で、追加検査をするとし、「核物質防護上の適格性、事業者として核物質防護を任せてよいのか、厳しく確認し、処分を検討したい」と語った。
柏崎刈羽原発の保安規定の審査では、福島第一原発事故を起こした東電に原発を再び運転する適格性があるかが論点となった。不正入室問題を受け、柏崎市長らから、東電の適格性を改めて検証するよう求める声もあがっているが、吉川管理官はこの日、基本的な設計方針を定める「設置変更許可」を認めた17年時点で、すでに適格性は認められていた、との見解も示した。そして、昨年の審議は、社長の責任に関する記述など保安規定順守を明確化したものとした。
また、市議からは「報道で明らかにならなければ隠しておくつもりだったのか」との質問も出されたが、吉川管理官は「隠しておく意図はなかった。しかるべきタイミングで委員会に審議し、発表することを考えていた」と語った。
一部の市議はこれらの説明を不満とし、「今回の問題は原子力行政の根幹が問われている。審査の正当性も問われており、適格性について再審査をすべきだ」と訴えた。
12日夜には柏崎市内で住民説明会もあり、規制庁の説明に対して住民から「『規制』というのは何のためにあるのか。4か月もの間、規制委の委員長に(不正入室の情報が)届かなかったのは仕組みに大きな問題がある」と批判もあった。
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東京電力柏崎刈羽原発の安全性を議論する県の技術委員会が12日に開かれ、東電社員による不正入室や安全対策工事未完了の問題について、東電から報告を受けた。委員からは東電への厳しい意見が相次いだ。
元日本原子力研究開発機構安全研究センター研究主幹の鈴木元衛委員は、東電が不正入室を把握後すぐに公表しなかった点を問題視。これに対し東電は「原子力規制委員会で審議された後には公開する予定だった。地域住民の立場で情報を出すタイミングを判断していきたい」と釈明した。原子力コンサルタントの佐藤暁委員は社員が複数のチェックを通過して中央制御室に入ったことを「重大な問題だ」と指摘。核防護を理由に事案を公表しなかった原子力規制庁も不適切だったとして、技術委で規制庁から説明を受けることを提案した。技術委は今後報告を受ける方向だ。
また、高齢を理由に3月末で委員を不再任とされた立石雅昭委員は改めて再任を求めた。会議後に取材に応じた中島健座長は「活発に意見する委員が抜ければ議論がしっかりできるか危惧がある」と話したが、不再任の最終的な決定は県の判断に委ねる意向を示した。【朝日新聞】