関西電力の森本孝社長は12日、福井県庁で杉本達治知事と面会し、県内の原発で保管が続いている使用済み核燃料の県外搬出先の確定について「2023年末を最終の期限に取り組む」と表明した。ただ、関電はこれまで福井県との約束破りを繰り返しており、新たな約束が実現できる見通しは全く立っていない。森本社長は「不退転の覚悟」と強調し、運転期間40年を超えた美浜原発3号機と高浜原発1、2号機(いずれも福井県)の3基の再稼働について、県の同意を取り付けたい考えだ。
◆実現見通せぬ中 関電社長「不退転の覚悟」
杉本知事はこれまで、関電による搬出先提示が「(原発3基の再稼働の)全ての議論の前提」と明言。森本社長は「2023年末の期限までに計画地点を確定できない場合には、その後確定できるまでの間、美浜3号機、高浜1、2号機の運転は実施しないという不退転の覚悟で臨みたいと考えております」とも発言した。
12日午後5時半に始まった面会には、原発を所管する経済産業省資源エネルギー庁の保坂伸長官が同席。梶山弘志経産相も東京からオンラインで参加した。保坂長官は「2023年末までの計画地点の確保に事業者とともに最善を尽くす」。梶山経産相も「使用済み核燃料の貯蔵能力の拡大に官民挙げて取り組む」と述べた。
関電は、使用済み核燃料の搬出先について、2020年内に示すと約束していたが守れず、これまでも約束破りを繰り返している。1990年代から県に核燃料の搬出先の提示を求められ、当初は使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設の稼働を「2010年ごろ」と回答。その後「18年に計画地点を示す」に変わり、それができないと「20年を念頭にできるだけ早い時期」へ先送り。昨年末に回答できなかった際は、「早めに」と答えていた。
◆青森・むつ市の中間貯蔵施設共用案巡り 国が地元に説明へ
使用済み核燃料の保管先確保は、原発を保有する電力会社にとって大きな課題となっている。電気事業連合会(電事連)は昨年12月、青森県むつ市で建設が進む中間貯蔵施設を、電力各社で共同利用する検討を始めたと表明。この施設は、東京電力と日本原子力発電が出資して作った会社が建設し、21年度の操業開始を予定している。共同利用案について、関電の森本社長は「積極的に参画したい」と話していた。
しかし、中間貯蔵施設があるむつ市の宮下宗一郎市長は「市は核のごみ捨て場ではない。全国の燃料を引き受ける必然性はない」と反発。共同利用が確実に進むかは、全く見通せない。資源エネルギー庁の保坂長官は「青森県やむつ市に対し、できるかぎり早く、政策的視点からの説明をしたいと考えている」と、この日の面会で方針を示した。
◆梶山経産相 原発3基の再稼働「理解と協力を」
梶山経産相は、関電が目指す運転期間40年超の原発3基の再稼働についても触れ、「2030年のエネルギーミックス(電源構成)の実現、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)の実現を目指し、足下では安全性を大前提に再稼働を進めることが必要」との認識を示した。その上で、「40年超運転を進めていくにあたっては、運転が終わった後の地域社会のあり方も含めて、将来の立地地域の目指すべき方向性を地域の皆さまと一緒に真剣に検討していくことが必要と考えている。例えば、産業の複線化や新産業の創出など地域の持続的な発展につながる取り組みについて、経済産業省として、他省庁の施策の活用も含めて、最大限支援をしていく」と述べ、3基の再稼働への理解と協力を求めた。
◆「議論の入り口に立った」福井県知事が評価
福井県の杉本知事は面会後、「一定の回答があった。議論の入り口に立った」と、関電の対応を評価した。16日に開会する県議会で、再稼働に同意するかについて議論が始まる見通しとなった。【東京新聞】