関西電力の大飯原発(福井県)の4号機が、定期検査を終えて17日夜、運転再開した。関電の原発は「稼働ゼロ」だったが、2カ月半ぶりに動かすことになった。ただほかの原発を含めて部品損傷といったトラブルや訴訟などを抱え、運転の先行きは見通せない。寒波による電力不足のなか、原発依存度の高い関電は厳しいかじ取りが続く。
大飯4号機は16日に臨界に達し、原子炉炉心や給水ポンプの試験などを経て、17日夜に発電を始めた。
同機は昨年11月3日に定期検査に入り、関電では約3年半ぶりにすべての原発が停止していた。当初は高浜原発(福井県)の3号機が、テロ対策などで義務づけられている「特定重大事故等対処施設」の設置を完了して昨年末に運転再開する計画だった。だが同原発4号機の伝熱管で見つかった損傷の調査が長引き、同じタイプの3号機も対策が不十分だとして運転ができない状態となった。
関電の予測では、大飯4号機が運転再開するまでの2カ月半、「稼働ゼロ」でも乗り越えられるはずだった。だが誤算だったのは昨年12月中旬以降の強い寒波の襲来。暖房利用などで、電力需要は10年に1度とされる規模まで高まった。
しかも、原発の代わりとなる火力発電所では、燃料に使うLNG(液化天然ガス)の調達が難航。中国や韓国でも同様に寒波でLNGの需要が増えていることや、米国産のLNGを運ぶタンカーが通航する中米・パナマ運河の渋滞などが主な理由だ。
電力需給は近畿2府4県や福井県南部などでも逼迫(ひっぱく)し、他地域の電力会社から電気を分けてもらう状況に。1月に入ると使用率が99%に達した時間帯もあった。関電幹部は「ここ2~3年は暖冬で、電力大手は各社とも(急激な需要増に)それほど準備していなかった」と打ち明ける。
事態の背景には、関電の発電に占める原発の割合が大きいこともある。2019年度の発電量のうち原発は27%。東日本大震災前は5割近くを原発に依存していたが、一時全ての原発が停止。震災後はLNG火力にも切り替えてきたが、再稼働も進めて原発比率を再び高めてきた。
原発の稼働を前提に置いている関電にとっては業績への影響も避けられない。昨年11月までに原発4基が停止して以降、代替発電による燃料費コスト増は1カ月で約120億円という。寒波によるLNGの追加調達や電力の市場調達にかかる費用も膨らんでいる。
こうしたなかで関電は大飯4号機の運転再開に期待する。1カ月あたり35億円の利益改善を見込む。ある幹部は「燃料調達の心配がないのは大きい」と話す。
だがほかの原発も含め、関電が今後も想定通りに稼働できるかは分からない。
高浜原発のトラブルに加え、大飯3号機も配管の溶接部に亀裂が見つかった。取り換え工事が計画通りに進めば2月中旬には運転を再開する。ただ工事計画は原子力規制委員会による認可が必要で、予定通りに進むかは見通せない。関電は同4号機でも同様の溶接部43カ所を検査し、「問題ない」と判断したが、現在は規制委が確認中だ。
また昨年12月に大阪地裁が、規制委による大飯3、4号機の設置許可を取り消す判決を出した。被告の国は大阪高裁に控訴し、判決確定まで設置許可を取り消す効力は生じない。だが原告は1月14日、設置許可の効力の一時的な停止を求める「執行停止」を同高裁へ申し立てた。認められれば、判決が確定する前でも動かせなくなる。
こうした動き次第で、関電はさらに難しい原発運営を迫られることになる。【朝日新聞】