原子力規制委員会の更田豊志委員長は9日、原子力発電所の地震評価に使う指針「地震動審査ガイド」の見直しを検討する考えを示した。関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の設置許可取り消しを命じた4日の大阪地裁判決で争点になった。更田委員長は「(大飯原発の安全審査に)過誤も欠落もなく判断に自信を持っている」と説明している一方、同ガイドについては規制委内部でも表現の分かりにくさが指摘されていた。
審査ガイドについて更田委員長は記者会見で「誤解を呼びやすい場所が特定されるのであれば、解説を加えるなり、分かりやすい表現に直すのは必要だ」と述べた。規制委が安全審査の際に参照する基準地震動の審査ガイドでは、地震規模を算出する経験式の「ばらつきも考慮する」とされている。
4日の判決では、経験式から求められる地震規模は平均値で、それよりも大きい地震が起きることが当然想定されるとした。規制委の審査について「地震規模の数値を上乗せする必要があるかどうか検討していない」と問題視した。
9日の規制委定例会でも判決について議論した。規制委としては活断層の長さなどのデータについて保守性を持って考慮しており、地震の評価を担当する石渡明委員は「判決で言われている検討はきちんとやっている」と強調した。一方で、石渡氏は「ばらついているのは経験式を出す元のデータで、ガイドそのものが誤解を招く文章になっている」と見直しの必要性に言及した。
国は判決への対応を検討中だが、近く控訴する見通しだ。判決確定までは大飯原発の稼働は可能だ。規制委は過去にも火山の噴火が原発に与える影響を評価する「火山影響評価ガイド」について、訴訟で「不合理」などと指摘されて表現の一部を変更したことがある。
【日本経済新聞】