東京電力福島第1原発事故に伴い一部が避難指示区域に指定された南相馬市原町区の住民45世帯144人が、東電に「ふるさと喪失」慰謝料や避難慰謝料約33億円を求めた集団訴訟の判決で、地裁いわき支部の名島亨卓裁判長は18日、東電に対し、原告132人に約1億4600万円を支払うよう命じた。一方、東電の事故の責任については一部を認めなかった。
判決で名島裁判長は、原発事故で生活が変わってしまった精神的苦痛に対する慰謝料について避難慰謝料とは別に支払いを命じ、避難指示解除準備区域の原告に150万円、緊急時避難準備区域の原告に70万円を上乗せした。
東電の事故の責任については、東電が大津波の到来を予測できた可能性があり、対策を講じる余地があったとした一方、具体的対策を取らなかった点については、大津波の危険性を指摘した「長期評価」に関する見解が当時は決定的なものではなく、切迫したものではなかったなどとして、著しい義務違反には当たらないとした。
判決を受け、原告側弁護団は「責任論や賠償額が過去の判例より後退している。敗訴ではないが不満は大きい」として控訴する方針を示した。原発から20~30キロ圏内に住む南相馬市の原告女性(78)は「古里は原発事故以前には戻らない。判決を受け入れられない」と話した。東電は「内容を精査して対応を検討する」とコメントした。
【福島民友新聞】