今年2月の審査合格から8カ月余り。東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働は、最大の障壁の一つだった地元自治体の同意を取り付け、今後は国の認可や2022年度完了予定の安全対策工事といった技術的なプロセスを残すのみとなった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から丸10年を前に、被災原発の再稼働が一気に現実味を帯びる。
宮城県と2市町は11日、政府から要請があった「地元同意」に応じると同時に、東北電が安全協定に基づき申し入れた「事前協議」に了解することを決定。近く政府と東北電に伝達することで、再稼働の前提となる地元側の手続きが終結する。
原子力規制委員会による新規制基準適合性審査は2月、基本設計に当たる「原子炉設置変更許可」の合格でヤマ場を越えた。今後は残る「工事計画」「保安規定」でそれぞれ認可を得るための審査が続く。
今後のスケジュールは安全対策工事の進捗(しんちょく)が左右する。東北電は4月、完工時期を20年度から22年度に延期。海抜約29メートルへの防潮堤かさ上げ、原子炉格納容器の破損を防ぐフィルター付きベント(排気)装置の設置といった新基準対応の工事費は3400億円程度に上る。
工事計画認可から5年以内にはテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」の整備が必要で、工事費はさらに膨らむ見通しだ。
女川2号機は福島第1原発と同じ「沸騰水型炉」。同型の日本原子力発電東海第2原発(茨城県)、東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)も審査に合格しているが、どちらも地元同意の手続きが進まず、再稼働のめどは立っていない。【河北新報】