有識者でつくる福井県原子力安全専門委員会が27日、県庁で会合を開き、関西電力が再稼働を目指す美浜原発3号機(美浜町)と高浜原発1号機(高浜町)について、関電から事故対策の状況などを聞き取った。鞍谷文保委員長(福井大教授)は会合後、両原発の安全性の検証について「いつやるかは決まっていない」と述べ、現時点で日程は白紙だとした。
高浜3、4号機が2015年に、大飯3、4号機(おおい町)が17年に再稼働した際には、同委員会が現場確認をした上で西川一誠前知事に対し安全性に関する報告書を提出し、西川氏が報告を踏まえて再稼働に同意している。
美浜3号機と高浜1号機についても鞍谷委員長は「現場を確認することは必要だ。委員の意見を整理し、県への提言を報告書にまとめることになる」と述べた。
会合では、40年超運転となる美浜3号機と高浜1号機について、委員から原子炉容器や配管が老朽化でもろくなっている危険性を指摘する意見があった。大飯3号機で蒸気発生器周辺の配管に傷が見つかった問題では、委員が関電に原因の究明を求めた。
◆高浜1、2号機視察した高浜町長 再稼働同意「11月中の結論ない」
高浜町の野瀬豊町長は27日、関西電力高浜原発1号機の事故対策工事完了に伴い、1号機と隣接する同2号機の構内を視察した。国から要請があった再稼働同意の判断材料にする。
事故対策工事について説明を受ける野瀬・高浜町長(右)=福井県高浜町の関西電力高浜原発で
事故対策工事について説明を受ける野瀬・高浜町長(右)=福井県高浜町の関西電力高浜原発で
運転40年超になる高浜1、2号機の再稼働を目指す関電は、ともに新規制基準を満たす対策工事を実施。原子炉格納容器にコンクリート製屋根(トップドーム)の設置、両機の事故対応の拠点となる緊急時対策所の建設、ケーブルの防火対策などで、自主的な安全性向上対策として、中央制御盤をデジタル式に取り換え、免震事務棟を建てた。高浜2号機については対策工事が続いており、来年4月に完了の見込み。
野瀬町長は同原発の木島和夫所長らの案内で、工事が完了した構内の施設を見て回った。視察後、「トップドームの新設など新しい機能が一段前に進んだ印象を受けた」と話した。
1、2号機の再稼働に同意するかどうかの判断時期については「11月中に結論が出ることはない」と明言。「出口戦略を含め国の中長期的な原子力政策の考えを聞き、町議会の意見や住民の気持ちを総合的に勘案して決めたい。いたずらに引き延ばすことはない」と語った。【東京新聞】