【論説】原則40年の期間を超えた運転となる関西電力の美浜原発3号機と高浜原発1号機の再稼働を巡り、地元自治体の同意が最大の焦点となっている。実現すれば国内初だが、見通しは立っていない。関電役員らの金品受領問題で失墜した信頼が回復していないからだ。
原発の40年超運転を巡っては、2011年の東京電力福島第1原発事故後に「原則40年、最長で延長20年」のルールができた。原子力規制委員会は16年、高浜1、2号機と美浜3号機について最長20年の延長運転を認可した。茨城県の日本原子力発電東海第2原発も審査に合格している。
関電は早ければ美浜3号機を来年1月ごろ、高浜1号機を来年3月ごろに再稼働させるとの工程を示している。そのために必要な安全対策工事は完了した。
だが、それだけでは再稼働できない。地元自治体の同意を得るのが通例で、これまでの流れに沿えば町会、町長、県会、知事の四つのステップを踏む必要がある。18年に国の新規制基準下で再稼働した大飯3、4号機の場合は、地元おおい町会の同意から約3カ月を経て知事同意に至った。
逆算すると関電が示した工程に間に合うように見えるが、その通りになるかは不透明だ。それは身から出たさびにほかならない。
関電の第三者委員会は3月、役員ら75人が高浜町の元助役森山栄治氏(故人)から計3億6千万円相当の金品を受領したと認定した。受け取ったのは原子力担当部門が中心だった。
混乱は今も続いている。関電子会社元社長らによる新たな金品受領が明らかになり、森本孝社長が県庁で杉本達治知事に謝罪した。
闇はどこまで深いのか。透明性を長年軽んじてきた関電にそもそも原子力事業を担う資格はあるのか。原発の40年超運転にはもとより不安の声が大きい中、都合の悪いことは隠蔽(いんぺい)しようとするのでは―。そう思われても仕方がないだろう。
不信の根はまだある。関電は17年11月、大飯3、4号機の再稼働について県に同意を求めた際、使用済み核燃料の搬出先となる中間貯蔵施設の県外候補地を「18年に示す」と明言した。その後「20年を念頭に」と修正し、期限まで2カ月余りとなった今も提示できていない。これで関電を信用できるだろうか。
ユーザー本位の精神を忘れた内向きの企業文化を是正するため、関電が3月に公表した業務改善計画は緒に就いたばかりだ。一度失った信頼を取り戻すのは容易ではない。規制委の審査に合格しているからといって、原発の40年超運転に対する不安が消えるわけでもない。法令順守と企業統治をなおざりにしてきた経営の刷新を果たすのが先だ。【福井新聞】