東京電力ホールディングス柏崎刈羽原子力発電所の安全対策工事が進んでいる。7号機は12月にも安全対策工事が完了し、2021年4月には原子炉を起動する前の検査も完了予定。実際の再稼働は地元同意を得てからだが、再稼働に向けた準備は着実に進んでいる。
5号機内に設けた緊急時対策所は、6、7号機で事故が発生した際の対策本部となる
5号機内に設けた緊急時対策所は、6、7号機で事故が発生した際の対策本部となる
東電は8日、安全対策工事の進捗について報道陣に現場公開した。まず案内されたのは、発電所の最も北側に位置する5号機の原子炉建屋内。新規制基準に適合した「緊急時対策所」が設置された。6、7号機で重大事故などが発生した際に、対策本部となる場所だ。
広さは約220平方メートル。放射性物質の流入を防ぐよう設計されており、既に内部の工事は一通り完了していた。緊急時は「本部」「復旧班」「保安班」などに分かれて対応する。最大限本部スペースを確保するため、トランシーバーや酸素濃度計などの防災資機材は床下の収納箱内にある。
緊急時対策所は5号機内のほか、発電所の入り口に近い場所にも設置を検討している。21年度下期の設置許可申請を目標に、現在はボーリング調査を実施していた。1~4号機にも近く全体を見渡せる場所で、将来的に柔軟な災害対応をするための拠点とする。
もう1カ所公開されたのが7号機の建屋の屋外に設けた「大物搬入建屋」。使用済み核燃料や新しい燃料のほか、ポンプのモーターなど大型機器を7号機内に搬出入する際に使用する。
大物搬入建屋(写真右下)を新設した柏崎刈羽原子力発電所の7号機
大物搬入建屋(写真右下)を新設した柏崎刈羽原子力発電所の7号機
19年4月に着工し、以前の大物搬入建屋を解体。地震時における液状化対策として地盤を改良して、新たな建屋を新設した。鉄筋コンクリート造りで、大きさは高さ8メートル、横9メートル、奥行き24メートルとかなり大きい。今月中にも完成予定だ。
7号機の安全対策工事が終了すれば、起動前に機能や性能などを確認する検査に移行する。原子炉を起動する前に必要な検査で、21年4月にも完了する見通しだ。
その検査工程では、核燃料を原子炉に装填(そうてん)することも検討している。核燃料を装填すれば、制御棒を引き抜くと原子炉を起動できる状態となる。柏崎刈羽原発の石井武生所長は「核燃料を入れることが目的ではなく、入れた状態で安全設備が動くかどうか確認することが安全に資することだと考えている」と強調する。
地元では、再稼働の同意前の燃料装填について、疑問視する声も出ている。ただ新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は「事業者としてはしかるべきプロセスなのでは」と、問題視はしていないようだ。
起動前の検査終了後は、再稼働に向け新潟県と柏崎市、刈羽村の同意が焦点となる。福島第1原発の事故原因や安全な避難方法などを検証する県の「3つの検証」もとりまとめに向け作業が進んでおり、21年度以降、再稼働に向けた議論はいよいよ本格化する。【日本経済新聞】