関西電力の原発が難題に直面している。40年を超える運転に必要な地元同意は見通しが立たず、福井県外に設ける方針の使用済み核燃料の中間貯蔵施設の計画地点も決まっていない。テロ対策施設の完成が期限に間に合わず、運転できない状態になる原発も。山積する課題への対応が注目される。
原発の運転期間は40年が原則で、原子力規制委員会が認めれば、最長20年まで延長できる。関電は、運転開始から40年が過ぎた高浜1、2号機(高浜町)と美浜3号機(美浜町)で運転期間の延長を目指している。
3基とも規制委から運転延長の認可を得ており、現在、2011年の東京電力福島第一原発事故後の新規制基準に対応するための安全対策工事が続く。高浜1号機と美浜3号機は9月、高浜2号機は21年4月にそれぞれ工事を終える予定で、その後、原子炉を再稼働させ、営業運転に入りたい考えだ。
再稼働には、地元の町議会や町長、県議会や知事の同意が必要で、今後はその判断が焦点となる。
福島第一原発の事故後に再稼働した高浜3、4号機(高浜町)や大飯3、4号機(おおい町)の場合、西川一誠・前知事は、大学教授らでつくる県原子力安全専門委員会で安全性などを確認。地元の町長や議会、県議会の意見を踏まえて、県のトップとして再稼働に同意した。
しかし、今回の40年超運転については、昨秋に発覚した関電幹部らによる金品受領問題の影響が極めて大きく、杉本達治知事が再稼働への判断を示す時期は見通せない。
杉本知事は記者会見などで「信頼回復が先だ」との考えを明らかにしている。6月末、関電の森本孝社長から金品受領問題の再発防止策などの説明を受けた際には、「地元の信頼を回復していくにはまだまだ及んでいない」と指摘。7月の記者会見では「(関電が)一つひとつ説明責任を果たし、十分な信頼を得るという前提でなければ、物事は進まない」と述べた。
一方、美浜原発を今月9日に訪れた森本社長は報道陣の取材に、問題の再発防止や業務改善などに取り組む考えを示した上で、「コンプライアンス、透明性を高め、皆さんにしっかり説明できる会社になるよう努力を続けたい」と話した。
互いに強調するのは「信頼回復」だ。「信頼回復とは、どういう状態になった時か」との質問に対し、杉本知事は「一つひとつの課題を前に進めることが信頼回復につながる」、森本社長は「皆さんの不安や疑問にしっかり応え、私たちが行動を変えていくことを理解してもらうことが重要だ」と説明している。
使用済み核燃料を一時的に保管する、中間貯蔵施設の候補地選定の行方も課題だ。関電は県外での立地を掲げ、県に「2020年を念頭にできるだけ早い時期に具体的な計画地点を示す」と約束している。
その「約束の年」も半分以上が過ぎたが、計画地点のめどは立っていない。杉本知事は6月末、森本社長に「形にしてもらう時が迫っている。早く報告をいただきたい」と迫った。森本社長は知事との面談後に報道陣に対して、「不退転の決意で取り組んでいる」などと述べた。
県は、1997年ごろから中間貯蔵施設を県外につくるように求めてきた。2017年には関電の岩根茂樹社長(当時)が「18年中に計画地点を示す」と表明し、西川知事(当時)が大飯3、4号機の再稼働に同意。関電は18年中という約束を守ることはできず、西川知事は不満を示したが、原発の停止までは求めなかった。
中間貯蔵施設が必要なのは、使用済み核燃料を再利用する国の「核燃料サイクル政策」の中核となる、日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)の完成が遅れてきたためだ。当初は1997年に完成するはずだったが、いまだ完成していない。規制委は今年7月29日、再処理工場の安全対策の基本方針が新規制基準に適合すると認める審査書を正式に決定した。原燃は2021年度上期の完成を目指しているが、残りの審査に時間がかかるとみられ、完成は見通せていない。
再処理工場に運ぶはずの使用済み核燃料は、各地の原発のプールにたまりつづけている。関電の場合、再稼働が進めば、6~9年程度でプールが満杯になる見込みだという。
「特定重大事故等対処施設」と呼ばれるテロ対策施設は、新規制基準で設置が義務づけられた。原発本体の工事計画が規制委の認可を受けてから、5年以内にテロ対策施設を設置しないと、施設が完成するまで原発を止めなければならない。
関電はテロ対策施設の設置工事を進めているが、高浜3号機では、当初の見込みより工事が大規模になったことなどが理由で、施設の完成が今月3日の期限に間に合わなかった。蒸気発生器内の伝熱管についた傷の原因を調べるための定期検査が続いていて、すでに半年以上、運転停止している。高浜3号機では、今年12月の施設完成を目指しているという。
関電によると、今年10月8日に設置期限を迎える高浜4号機も、期限までに完成できない見込みという。その後に期限を迎える高浜1、2号機、美浜3号機、大飯3、4号機については「施設の早期完成に向けて、ありとあらゆることを検討、実施している」などとして、設置工事の完了時期は「現時点で未定」だとしている。【朝日新聞】