四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを大分県内の住民4人が求めた仮処分申し立てで、住民側は、福岡高裁で係争中の即時抗告を取り下げた。取り下げ書を15日に送り、福岡高裁が16日に受理した。
大分の仮処分は2016年、住民4人が大分地裁に申し立てた。大分地裁は18年9月、阿蘇山(熊本県)の噴火リスクなどについて「具体的な危険は存在しない」として、申し立てを却下したため、住民側が18年10月、福岡高裁に即時抗告していた。
伊方原発を巡っては今年1月、山口県内の住民が差し止めを求めた仮処分申し立てで広島高裁が運転禁止を決定しており、福岡高裁で即時抗告が却下された場合の悪影響を避ける必要があると判断したという。
伊方原発3号機は現在、運転停止中。四電は広島高裁の運転禁止の仮処分決定を不服として広島高裁に異議申し立てをしている。広島高裁の運転禁止決定は、今後の異議審などで覆らない限り効力が続く。
住民側は、福岡高裁は、差し止め命令の要件となる「緊急性」がないとして抗告を棄却する可能性が高いとみて、広島高裁の異議審など伊方原発を巡る他の訴訟に悪影響を及ぼす可能性があると判断。即時抗告の取り下げを決めたが、同じ住民が中心となり大分地裁で係争中の差し止め訴訟は続けるという。
住民側共同代表を務める中山田さつきさん(66)=大分県杵築市=は「まずは、伊方原発を止め続けることが大切。原告団の総意で決めた」と説明。四電は「伊方原発が安全であることを裁判所に認められるよう、ほかの係争中の訴訟でも引き続き丁寧に立証していきたい」とコメントした。【朝日新聞】