関西電力幹部らの裏金受領問題を調査している第三者委員会(委員長・但木敬一元検事総長)は3月14日、調査報告書を公表した。
報告書によると、福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から金品を受領していたのは関電、関連会社の合計75人で、受領総額は3億6千万円相当に上った。
関電は当初、社内調査で、金品が岩根茂樹前社長、八木誠前会長までに贈られていたことを公表し、「社会的儀礼の範囲」としていた。
だが、社内調査以上に、金品が森山氏から渡っていた実態が判明した。
報告書は「森山氏が見返りを期待することなく、社会的儀礼の範囲をはるかに超える多額の金品を提供するなど、容易には想定し難い」「実際に森山氏は関電の役職員に対し、自分が関係する企業に仕事を発注させ、工事の情報を提供するように要求。(中略)報酬、手数料、謝礼等として経済的利益を得てきた」と分析。関電が森山氏を頼りにして原発事業を進め、森山氏は関電をバックに商売するという「関係」と指摘した。
「高浜原発の3号機、4号機の増設、原発の定期点検などあらゆることを森山氏は関電に有利になるように解決。『森山はすごい』と評価されるようになり、関電は森山氏を頼るようになった。森山氏は『俺を怒らせたら大変だぞ』と吹聴。功労者であり、モンスターだった」(但木委員長)
第三者委員会が実施した、削除されたデジタルデータなどを復元するデジタルフォレンジックにより、原子力事業本部の事業本部長代理が300万円を受領したと思われるような資料が発見された。
「また、調査の過程で関電の倉庫から『貴重品扱 高浜 森山氏から会社預り品ロレックス時計2個』と記載されたメモと所有者不明のロレックスの2個の時計が発見された」(同)
関電の社内調査が不十分だったことは明らかだ。
森山氏から高額な金品を受け取っていた豊松秀己元副社長。取締役を退任した後も月給490万円を受領。その中に金沢国税局の税務調査で不正が発覚し、追加納税した補填が含まれていた。
「八木前会長、岩根前社長ら幹部が話し合って補填を決めた。けしからんことだ」(同)
重大なコンプライアンス違反で会社法などに抵触する可能性もあるという。
そして、森山氏から受け取った金品を使ってしまった人物がいたことも報告書で明らかになった。
「森山氏の問題を疑問視する人もいたが、経営者に解決する姿勢がなかった。これまで関電は森山氏の関係で工事発注に不正はないとしていたが、当委員会では不正があったと判断している」(同)
※週刊朝日 2020年3月27日号