東北電力の女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機が26日、原子力規制委員会の安全審査に合格した。再稼働に向けた今後の焦点は地元自治体の同意手続きや安全対策工事の進捗に移る。宮城県は独自に安全性を検証し、周辺自治体の意見も踏まえ、再稼働に同意するかどうかを判断する。
規制委は26日午前の定例会で女川2号機の合格を正式に決め、同日午後に東北電に合格証を交付した。2011年の東京電力福島第1原発の事故後にできた新規制基準に基づく安全審査に合格したのは9原発16基目で、東北電では初めて。
女川原発は11年の東日本大震災で被災したが、事故を免れた。東北電は13年12月に安全審査を規制委に申請した。
再稼働すれば、東北電は年間350億円の燃料費を削減できる。だが、合格してもすぐに動かせるわけではない。地元同意や工事に手間取り、再稼働できていない原発はこれまでに6基ある。
東北電は安全対策工事を20年度中に終える予定だが、再稼働の事前了解が必要な安全協定を宮城県、女川町、石巻市と結んでいる。
宮城県は有識者検討会で独自に安全性を検証してきた。まずは検討会で結論をまとめ、女川町、石巻市との協議に入る方針だ。村井嘉浩知事は26日、再稼働への賛否に関して「現時点では白紙だ。ある程度時間をかけて考えたい」と述べた。
地元同意の行方は見通せない。女川原発は大震災直後に住民の避難所になった経緯もあり、再稼働を懸念する声は比較的少ないとされる。ただ石巻市の市民団体が19年11月、市と県に再稼働に同意しないよう求める仮処分を仙台地裁に申し立てている。【日本経済新聞】