東京電力福島第1原発事故の初期被ばくや自主避難による家族の分断などで精神的被害を受けたとして、福島県中通り地方の住民52人が東電に計約9800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁(遠藤東路裁判長)は19日、国が定めた指針を超える東電の賠償責任を50人について認め、計約1200万円の支払いを命じた。住民2人の請求は棄却した。
中通りの多くは国の原子力損害賠償紛争審査会が定めた賠償のガイドライン(中間指針)で自主的避難区域に当たる。東電は訴訟前に一律12万円(子ども・妊婦は最大72万円)を賠償済みで、住民一人一人が受けた精神的損害を司法がどう判断するかが焦点だった。
住民は2016年4月に提訴。住民側は訴訟の長期化による心身の消耗や原告の死亡などを考慮し、和解による早期解決を要望した。地裁は19年12月、原発集団訴訟で全国初の和解を勧告したが、東電が拒否していた。
訴えによると52人は事故当時、福島市など避難指示区域外の6市町に居住。住民側は損害は個人で異なるとし、1人当たり110万~900万円を求めた。
第1原発事故を巡る集団訴訟は各地で約30件提起され、いずれも地裁と高裁で審理が続いている。【河北新報】