関西電力の幹部らが高浜原子力発電所のある福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取っていた問題を受けて日本経済新聞社が原発や関連施設のある自治体を調査したところ、半数近くが財政の先行きを不安視し、国などの支援拡充を望んでいることが分かった。経済上の恩恵と引き換えに立地が進んだ原発だが、地域との関係が改めて問われる。
原発や関連施設のある全国の25市町村(建設中や計画中を含む)に10~11月、原発政策などに関するアンケート調査を実施し、19市町村から回答があった。
このうち半数近い9市町村が財政の先行きについて「悪くなる」と見ている。立地地域への国などの財政支援は10市町村が「かなり不十分」「やや不十分」と答えた。9市町村では2018年度決算での歳入が、東日本大震災前の09年度と比べて減っている。
原発の長期停止や廃炉などが地域経済にマイナスの影響を及ぼしているかという問いには12市町村が「かなり影響」「やや影響」と答えた。
原発の立地自治体には「電源三法交付金」と呼ばれる国の各種交付金のほか、施設の固定資産税などが入る。
これらが18年度決算の歳入全体に占める割合は詳細を答えた調査自治体のうち北海道泊村で60%強、新潟県刈羽村で50%強、福井県おおい町で50%弱など、高い水準を示した。
それ以外にも関連施設への雇用や地元企業への工事発注、定期検査のたび訪れる作業員の宿泊施設や飲食店などで、お金が落ちる。関電問題の背景にもあるとみられる、こうした「原発マネー」は高浜町のみならず立地自治体の支えだ。
原発関連の交付金などを活用して立地自治体では道路や公共施設などの整備を進めた。しかし、人口減には歯止めがかからず、多くは地域経済の疲弊にあえぐ。25市町村の19年1月時点の人口は東日本大震災後の11年3月時点と比べて5%減少した。
エネルギー政策を巡り立地自治体が果たしてきた役割に対する国民の理解については17市町村が「かなり不十分」「やや不十分」と答えた。立地自治体からは「国は原子力政策がどうあるべきか正面から向き合って議論し、進むべき道筋を明確にしてほしい」などの声も出ている。
【日本経済新聞】