臨時国会は十六日、衆参各二日間の予算委員会を終えた。野党は関西電力役員らの金品受領問題を最重視したが、政府側は解明に乗り出す姿勢を見せず、原発を所管する省庁の監督責任の議論も深まっていない。日米貿易協定や新閣僚の疑惑を巡っては、野党の追及に政府側が守勢に立たされる場面もあった。
安倍晋三首相は序盤国会の審議で関電役員らの金品受領に関し「第三者の目で徹底的に全容解明することが不可欠だ」と述べるにとどめた。参院予算委は関電役員らの参考人招致を要請したが、関電は第三者調査への対応を理由に拒んだ。野党は今後、予算委での集中審議を求める構えだ。
今国会は、立憲民主、国民民主両党などが衆参の新会派を結成して初の論戦。野党は関電問題に加え、NHK番組に日本郵政グループが圧力をかけた疑惑、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付を「三点セット」として追及した。
政府側はNHKへの圧力疑惑には「個別のやりとりにコメントは控える」と論評を避けた。芸術祭への補助金の不交付には「文化庁で判断した」と距離を置いた。三点セットでは今のところ、野党にとっての成果は乏しい。
日米貿易協定を巡っては、政府は米国の関税撤廃率が貿易額ベースで92%になると主張。継続協議となった自動車と自動車部品の関税撤廃を前提にした数字で、国民民主党の玉木雄一郎代表は「関税撤廃は約束されていない」と指摘。政府の説明は「国民を欺く行為だ」と非難した。
菅原一秀経済産業相が十数年前、選挙区内の有権者らにカニやメロンを贈っていた疑惑も浮上した。野党は贈答品の送付先リストを示して事実関係を問いただした。菅原氏は「事務所にリストや領収書は見当たらなかった。確認作業をしている」と繰り返した。
玉木氏は十六日の記者会見で、新会派での質疑に関し「重複がなくうまくいった」と評価。一方で、原発政策をはじめ会派内で温度差があるテーマは、足並みの乱れを避けるため、踏み込み不足になるという課題も残した。【東京新聞】